第39話「紙飛行機」

2017/08/29

 

僕が小学校3年生の時に体験した怖い話です。

その当時、僕のクラスでは紙飛行機が流行っていました。
4階にある僕たちの教室の窓からグラウンドに向かって飛ばして、飛距離が最も短かった人が交代で飛行機の回収係をやるっていうルールでした。
みんな一番遠くまで飛ばそうとして、形を工夫したり、素材を工夫したりして、結構、夢中になってやっていました。
僕が作る紙飛行機はだいたい可もなく不可もなくって感じで、ビリにもならないけど1位にもなりませんでした。

ある日の放課後のことです。
その日ももちろん紙飛行機グランプリが教室で開催されていました。
僕の番がきました。折り紙で作ったシンプルな紙飛行機です。
フワッと浮くように投げました。20mくらいは、スーッと飛んでいきました。
でも、その日はちょっと変でした。
いつもだったら、そこから下降していくんですけど、もう一度、フワッと浮き上がったんです。
フラフラとしながら、3位の子を抜き、2位の子を抜き、1位の子の距離も超えて、まだ飛んでいます。
教室で歓声が上がりました。新記録でした。

それから僕の紙飛行機は、上昇気流に乗ったみたいに、少し落ちてはフワッと上がるというのを繰り返し、どんどん距離を伸ばしていきました。
気がつくと4階の高さをとうに超えて学校の屋上くらいの高度を飛んでいます。
まるで風船のようでした。
「どこまで飛ぶか、ついて行ってみようぜ」
誰かが言ったのをきっかけにみんなでグラウンドに出ました。
このままだと校外まで飛んでいきそうな勢いでした。
「どうなってんだ?」と誰かが僕に聞きました。
僕にもよくわかりませんでした。特別な作り方なんてしてないんですから。
やがて、紙飛行機は学校外へ飛び出していきました。
まだまだ落ちる気配はありません。
やがて、先頭を走っていた子が諦めたように足を止めたので、みんなも立ち止まり紙飛行機の行方を目で追いました。
紙飛行機は、豆粒みたいな大きさになり、やがて見えなくなりました。

一躍、僕が紙飛行機制作のレジェンドになった数日後のことです。
通学路沿いにある雑木林の中で男性の首吊り死体が発見されたというニュースがあり、学校中が大騒ぎになりました。
しかも、噂によれば、発見された遺体は口に紙飛行機をくわえていたというのです。
直感的に、僕が飛ばした紙飛行機だとクラスのみんながわかりました。
奇妙なことに、男性が自殺したのは、あの紙飛行機を飛ばした日の前日でした。
飛んできた紙飛行機がたまたま自殺した遺体の口に入るなんてことがありえるでしょうか。

あの紙飛行機の異常な飛び方は、もしかしたら・・・。クラスのみんなが僕と同じ想像をしているのがわかりました。
「・・・追わなくてよかったね」誰かが言うと、みんながうなずき合いました。
・・・あのまま、紙飛行機を追い続けていたら、一体、何が起きていたのでしょう。

 

 

-ショートホラー