Oさんが先日デパートに買い物に出かけた時のことだ。
「なんか買って!なんか買って!なんか買って!」
そう言って、座り込んで駄々をこねている女の子がいた。
4、5歳だろうか。
わがまま盛りだろうし、昔は自分の娘にも似たような時期があったなとOさんは懐かしく見ていたのだけど、女の子の親と思われる女性は背中を向けて完全に無視を決め込んでいた。
「なんか買って!なんか買って!」
女の子の癇癪は落ち着くどころがどんどん激しくなっていく。
どうするんだろう。
気になって見ていると、ふいに、Oさんは女の子と目が合った。
すると、次の瞬間、Oさんの目の前に女の子の顔があった。
まるで瞬間移動したようなスピードだった。
呆気に取られていると、女の子はOさんのズボンをギュッと掴んでニチャッと笑った。
「ねぇ、なんか買って!」
その日、Oさんが買うつもりなどなかった高価な陶器の壺を衝動的に買ってしまったことと、さきほどの女の子の間に何か関係があるのかは、いまもよくわからない…。
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