節分にまつわる怖い話 #269

 

2月3日は節分。
今日は節分にまつわる怖い話をいくつか紹介しよう。

その壱

Mさんが小学校一年生の時の節分に体験した奇妙な出来事。
Mさんは、お母さんからもらった豆を家にまいていた。
「鬼は外、福は内!」
あらかた家の中は撒き終わって、ふと玄関の方を見ると、ちょうどお父さんが入ってくるところだった。
今日は早く帰れたのだろうか・・・。
Mさんは、ほんの冗談のつもりで、お父さんに豆を投げてみた。
「鬼は外!」
豆の一粒が、お父さんの顔に当たった。
次の瞬間、驚くべきことが起きた。
お父さんが顔を手で押さえて、悲鳴を上げたのだ。
見ると、豆が当たったところが、火傷跡のように赤くただれていた。
お父さんは苦しそうにその場に倒れ込み、のたうち回った。
Mさんは、怖くなって泣きながらお母さんを呼びに行った。
ところがお母さんを連れて戻ってくると、お父さんの姿はなかった。
お母さんが連絡して、お父さんはまだ会社にいることがわかった。
「今思えば、アレは父に化けた本物の鬼だったのかもしれまん・・・」
そうMさんは振り返る。
古来、豆は「魔滅(まめ)」とも書き、魔を払う力があると言われている。
Mさんは、節分になると、今でも豆まきを欠かさずやるという・・・。

その弐

Nさんが幼稚園の頃。
同じ幼稚園に通うTくんの家で友達何人かと豆まき大会をしていた。
始めは教わったとおり真面目にやっていたのだけど、そこはいたずら大好きな子供達。
だんだんとふざけてきて、誰かが「鬼は内、福は外」と、内と外を逆に掛け声をし始めた。すると、他の子達も真似し始めて、みんなで「鬼は内、福は外」の大合唱。
その日は楽しく終わった。

ところが、その1週間後。
Tくんの家に強盗が入り、Tくん一家は惨殺されてしまった。
事件を知ってNさんがまず頭に思い浮かべたのは、節分の時の掛け声だった。
「鬼は内、福は外」
そうみんなで唱えたせいで、悪い鬼を呼び寄せてしまったのではないか。
Nさんには、そう思えてならなかった。
豆まきの時の掛け声と因果関係があるかはわからない。
大人になったNさんは、自分の子供に絶対に豆まきはさせないようにしているという・・・。

その参

昭和初期のこと。
ある農村にEという男の子がいた。
Eは、いたずら小僧で、よく村の大人を怒らせていた。

ある年の節分のこと。
Eの村では、節分になると神社の本殿で御神体と一緒に保管されている豆を、
年の数だけ神主さんから頂戴して食べ、無病息災を祈願するという行事があった。
Eは、年の数しか豆をくれないなんてケチくさいと思っていた。
そこで、節分の準備の真っ最中の本殿に密かに入り、神主さんの目を盗んで、
枡の中に入っている豆を全部食べてしまった。
豆が全部なくなっているのを知ってみんなが驚く様を想像すると、
Eは楽しくなってきた。
たしかに、その後、村人達は驚き、とまどい、恐怖におののいた。
けど、それはEが想像していたものではなかった。
みんなEを見て、叫び声を上げ、逃げていったのだ。
わけがわからず村から逃げるようにしてたどりついた池の水に顔を映すと、
そこに映っていたのは自分の顔ではなかった。
目は落ち窪み顔中皺だらけ。
まるで老人のような顔。
神さまの豆を全て食べてしまうなんて罰当たりなことをしたからだ・・・。
Eはボロボロと涙を流して泣いた。

夜になると篝火を掲げた村の大人達がやってきた。
・・・自分を探しにきてくれたのだろうか。
Eは一瞬、そう思ったけど、すぐに違うとわかった。
大人達は、鎌や鍬や斧を手にしていた。
自分を始末する気なのだ。
大人達の中にはEの母親と父親の姿もあった。

その後、Eがどうなったかはわからない・・・。
ただ、その年以来、近隣の村で、節分になると、
人が襲われる事件が起きるようになり、
“節分の鬼”として恐れられるようになった。
目撃者の話では、節分の鬼は、
体格と似つかない年老いた顔をしていたという・・・。
節分の鬼は豆が苦手で、豆を投げつけると、逃げていくそうだ。

その四

みなさんはお気づきだろうか。
この三つの話の共通点に。
実は、この三つの話は一つの物語でもあるのだ。
もうすぐ2月3日。
今年、節分の鬼はどこに現れるのか。
・・・それは、あなたの家かもしれない。

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