私が看護師として働いている病院には奇妙な噂があります。
ある病室の窓際のベッドで眠ると、同じ悪夢を見るというのです。
はじめはみんな奇妙な偶然と思っていたのですが、
同じ病室に入院した繋がりのない患者さんが全く同じ訴えをしてくるので、
看護師の1人が試しにそのベッドで寝てみたそうです。
すると、深夜、血の気が引いた顔をして、その看護師がナースステーションに逃げてきたといいます。
その看護師も入院患者さんとまったく同じ悪夢にうなされ目覚めたのでした。
その悪夢とはこんな内容でした。
夢の舞台は寝ているその病室。
寝た場所が夢の舞台なので、はじめは現実なのかと感じるそうです。
夜中にハッと目覚めるところから夢ははじまります。
カーテンの隙間から差し込む月明かり。
なんだか恐ろしいことが起きるような不安な気持ちがするのだといいます。
音が聞こえます。
カラカラカラカラ・・・。
聞き覚えのある音。
看護師が配膳や往診で使う金属製の台車の音でした。
音は自分がいる病室の前で止まります。
けど、誰も入ってきません。
おかしいなと思って、ベッドを抜け、病室のドアを開けてみると、
非常灯だけの廊下に人の姿はありません。
台車だけが病室の前に置かれています。
その台の上に、書類があります。
手にとって見てみると、それは自分自身の死亡診断書なのだそうです。
気味が悪くなって書類を戻すと、足音が聞こえます。
見ると廊下の向こうからナースが歩いてきます。
けど、ウチの病院のナース服ではないし、
白いナース服はいたるところが赤黒く汚れていました。
非常灯に反射してナースの手元が光ります。
手にはメスが握りしめられていました。
身を翻して逃げて、誰かに助けを求めようと思うのですが、
どの病室もなぜかドアが開きません。
ナースステーションにも人影がないどころか、
病院自体が無人でした。
無我夢中で逃げ続けて、やっと開くドアを見つけました。
けれど、そこは手術室でした。
ハッとした時には手遅れ。
ドアが閉まり、開かなくなっていました。
どうにか出ようともがいていると、「フフフ」と笑い声が聞こえます。
振り返ると、さっきのナースがどこからともなく現れていました。
足がもつれ手術台に倒れたところに、ナースがメスを大きく振りかぶり、、、
そこで目が覚めるのだといいます。
怪談話にでもありそうな恐ろしい悪夢です。
そして本当に単なる夢なのかと思う続きがありました。
目覚めた後、痛みを感じ、上半身を確認すると、
手術跡のようなミミズ腫れがいくつもあるのだといいます。
看護師が実際に悪夢を見て以降は、その病室自体閉鎖されて、
使われなくなりました。
なので、今は固く閉ざされています。
けど、その病室にはやはり何かがある気がします。
前を通ると、不穏な気配を感じますし、
中に誰かがいるような物音を聞いた人もいます。
入院患者さんが転んだりして怪我をしたりするのは、
大抵、その病室の前です。
高齢の患者さんの容体が、その病室の前で急変し亡くなったこともありました。
最近、ウチの病院の経営者が変わりました。
新しい経営者の方は、幽霊や怪談話を信じる人ではなく、
今度から、その病室を再び使うことにするそうです。
恐ろしいことが起きなければいいけど。
看護師一同、心配しております・・・。
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