もう30年くらい前の話だ・・・。
僕は当時、高校生だった。
学校までは自転車で通っていた。
山を一つ越えないといけないので、
毎日ヘトヘトだったのを覚えている。
ある日、通学路横の雑木林にラジカセが落ちているのを発見した。
今時の子供らはもはやラジカセを知らないらしいけど、当時はカセットテープがまだまだ主流だった。
僕は一人きりだった。
なんで、そんなことをしたのか今ではさっぱりわからないけど、僕はラジカセを拾って家に持ち帰った。
電池で動くタイプで、
汚れて傷ついていたけど、
新しい電池を入れたら、
ちゃんと電源が入った。
「取り出し」ボタンを押してみると、カセットテープが入っていた。
テープには楽曲名など何も書かれていなかった。
何が録音されているのだろう。
興味本位で巻き戻して再生してみた。
サーーーというノイズがしばらく続いた。
ノイズ以外何も入ってないのかと、
止めようとした時、物音が聞こえた。
ドアを開閉する音。
ベッドに腰掛けるドサッという音。
・・・誰かの生活音のようだ。
つい聞き続けてしまった。
衣擦れの音。
着替えているようだ。
女の子だろうか。
危ない妄想が膨らみかけた時、音の主は部屋を出ていった。
遠く声がした。
「単一電池の買い置きなかったっけ?」
馴染みのある低い声。
違和感はあったけど、僕自身の声だった。
さっき母親に電池がないか聞いた時の音だった。
なんだ、録音ボタンが押されていたのかと苦笑しかけて、僕はハッと青ざめた。
電池を交換する前、電源すら入れていないのに、
なぜ録音されていたのか・・・。
すぐにラジカセを捨てにいったのは言うまでもない。
でたらめのお経を本気で唱えて、走って家まで帰ったのを今でも覚えている。
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