長い髪の毛 #253

 

ある日、目を覚まして鏡を見ると、側頭部の髪の毛の中に異様に伸びた毛があるのを見つけた。
昨日の夜まではなかった気がする。
つい先日、美容室で耳が出るくらいまでの短さにしてもらったばかりなので、変だなと思った。
とりあえず家にあるハサミで、長い毛だけ切ることにした。

ところが翌日起きてみると、また長い毛が生えていた。
昨日確かに切ったはずなのに。
しかも、昨日の毛より長く、女性のセミロングくらいはあった。
量も1本や2本どころじゃなく、一房くらいある。
まるで自分のものではない髪の毛が生えてきているようだった・・・。
気味が悪くて、すぐに長い髪の毛をすべて切り落とした。

その日の夜。
寝苦しくて夜中に目が覚めた。
喉がつまって息苦しい。
慌ててスタンドライトをつけると、
信じられない光景が待っていた。
首に黒い髪の毛が蛇のように巻き付いていた。
その髪の毛は僕の側頭部から伸びていた。
ちょっとずつ首が締まっていく。
苦しくて喘いだ。
手でベッド横の引き出しを探った。
ハサミの感触があった。
首に巻きついた髪にハサミを入れていく。
まるで針金みたいな固さだった。
ハサミに目一杯の力をいれてようやく切れた。
床に落ちた髪の毛は切れてなお、しばらく生き物のようにモゾモゾと動いていた。
しばらくして、動きは止まった。
一体なんなんだ!
僕は鏡で自分の姿を見て絶句した。
明らかに自分のものでない、いくつもの髪の毛の束が、ヘビのようにうねうねと蠢いていた。
その髪の毛が一斉に僕の首をめがけて飛びかかり・・・。

・・・朝、目を覚ますと髪をとかす。
すっかり日課となった作業。
鏡に映る自分は別人のようだ。
長い髪が嬉しそうに反応している。
僕は髪に生かされている・・・。

-怖い話