【怖い話】【心霊】第162話「温泉宿の怖い話」

2017/10/16

 

会社の社員旅行で、とある温泉宿に宿泊した時のことだ。
夕飯前に同僚達と大浴場に行くことになったのだけど、タオルを忘れたので僕だけ部屋に戻った。
すると、部屋の中に仲居さんがいた。
こちらに背中を向けて正座して畳に座っている。
布団の用意をしてくれているのかなと思ったけど、一組も布団は敷かれていなかった。
何もせず客室に座っているなんて変だなと思い、「あの・・・」と声をかけてみたけど、返事はない。
すると、仲居さんはスッと立ち上がり、僕の方に歩いてきた。顔を俯けているので表情は見えない。そして、そのまま何も言わずに部屋を出ていった。
・・・一体なんだったのだ。
もしや留守を狙って客室の荷物を漁っていたのではないか。心配になった僕は、後を追って、廊下に出た。けど、仲居さんの姿はすでになかった。逃げ足の早い人だ。
その時、廊下の向こうから別の仲居さんがやってきた。
「すいません」
僕はその仲居さんを呼び止めた。
けど、その時、気がついた。
・・・さっきの仲居さんと着物が違う。
「どうかなさいましたか?」
仲居さんが僕にたずねた。
僕が事情を説明すると、仲居さんは苦笑いしながら言った。
「ご心配なさらなくて大丈夫です。アレは悪さはしませんので・・・」
そう言って、仲居さんは話を打ち切ってそそくさと去っていった。
後で聞いた話だが、同僚達も宿の各所で、僕が目撃した奇妙な仲居さんと出くわしていたそうだ・・・。

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