第111話「ぞろ目」

大学の時の同級生に、人並外れたツキを持っているFというヤツがいた。そいつは、とにかく運がよかった。
パチンコをやれば大当たり、競馬をやれば万馬券を当てる、麻雀をやれば役満を連発するといった感じだった。
本人がスキルを磨いているわけではなく、Fはどちらかというと素人だ。幸運の女神に微笑まれてるとしか思えなかった。Fはギャンブルで手に入れたお金だけで学生の身ながら、ずいぶん羽振りがいい生活を送っていた。

ある日、Fともう一人の同級生Gと、Fが住むマンションでお酒を飲んでいた時のことだ。
Fがふいにサイコロを3つ持ち出してきて言った。
「最近、ぞろ目を狙って出せるようになったんだ」
そう言ってFは手の中で転がしていたサイコロを放った。
・・・3つとも5の、ぞろ目。
「マグレ、マグレ」GはFにサイコロを渡し、もう一回振るよう促した。
Fは躊躇せずサイコロを振るった。
・・・3つとも1の、ぞろ目。
何度やり直してみてもFはぞろ目を出した。
何かカラクリがあるんじゃないかとスマホで撮影してみたりしたけどFがトリックを使ってる素振りなんて発見できなかった。
鳥肌が立った。ここまでくると特殊能力としか言えない。

だけど、Fはその数日後、交通事故であっさりとこの世を去った。
「幸運の女神に見放されちまったのかもしれないな・・・」葬式の時、Gはポツリとそうもらした。
だけど、僕はそうじゃないんじゃないかと思った。何かの本で読んだことがあるのだ。

悪魔は、人生の絶頂を味わわせてから転落させようとすると・・・。

僕が、そんな不気味な考えを持ったのには理由がある。
Fが死んでから、サイコロを振ると決まってぞろ目が出るようになったのだ・・・。

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