奇妙な親子 #246

 

ある日、いつも子供を遊ばせている公園で見慣れない親子を見かけた。
お母さんと4、5歳くらいの男の子。
男の子は、他の子供達にまじろうとするわけでもなく、
お母さんの手をギュっと握りしめていた。
二人は、どこか様子をうかがうように、隅の方から動かなかった。
新しくこのあたりに越してきた家族なのだろうか。
私は、歩み寄って話しかけてみた。
「こんにちは」
近くで見ると、なんだか二人とも暗い雰囲気を放っていた。
まるで、この母子の周りだけ太陽の光が当たっていないような薄暗さだった。
お母さんの方が小さくうなずいた。
男の子は私を上目使いにじっと見つめている。
「もしかしたら、このあたりに新しく引っ越してきたんですか?」
余計なお節介とわかっていながら、なんとなく放っておけなかった。
「え・・・えぇ」
お母さんは、目をキョロキョロ泳がせながら答えた。
なんだか挙動不審だった。
ちょっとお母さんの方は取っつきづらそうだなと思い、
私は男の子の方に話しかけることにした。
「みんなと遊ばないの?」
男の子はまばたき一つせず、私を見返すだけだった。
「その子はいいんです!」
お母さんが、すごい剣幕で言った。
「この子おかしいんです。だから、みんなに気味悪がられるだけよ」
子供を守ろうとしているというより、本気で思っているみたいだった。
でも、いくらなんでも、子供に聞こえる距離で言うべき言葉じゃない。
私は虐待を疑った。
「このくらいの子供だったら、ちょっと変な行動を取るのは普通ですよ。ねえ?」
最後は男の子に向けて言った。
男の子の口からククッと笑ったような音が漏れた気がした。
そして、お母さんから手を離し、代わりに私の手を握った。
「・・・その子、あなたにあげます!」
「・・・え?」
そういうや、お母さんは後退りしはじめた。「ごめんなさい、ごめんなさい、その子私の子供じゃないの。あなたもがんばって、次の人を探して」
お母さんは逃げるように公園から走り去った。
一度も振り返ることはなかった。
私はただ呆然とするしかなかった。
・・・いったいなんなの?
男の子の手の力が強まり、ハッと我に返った。
すごい握力だ。
大人の男の人におもいきり手を握りつぶされているみたいだった。
私は痛くて手を外そうとした。
けど、外れない。
「ごめんね、いたいから手を離してくれない?お母さん呼びにいかないと」
男の子は、ただ黙って、私を上目使いに見上げるだけだった。
『私の子供じゃないの・・・』
『次の人を探して』
さっきのお母さんの言葉を頭の中で反芻する。
この子は一体・・・。

タイトルとURLをコピーしました