【怖い話】404号室の怪

 

僕が住んでいるマンションは、
「死」を連想させる「4」のつく部屋番号が使われていない。
例えば、303の次は305といった具合に、4だけ飛ばされている。
エレベーターも4階自体がなく、3階の次は5階となっている。
オーナーのこだわりなのだろうとずっと思っていたし、特にそれで不便することもなかった。

ところが、ある時、僕は知ってしまった。
5階の一番端に、404号室とプレートが打たれた部屋が存在することを。
というのも、僕はその部屋の下の312号室に住んでいて、たまたま階段で上がってきた時に間違えて5階に行ってしまい気づいたのだ。

ここまで徹底して「4」を排除しながら、一方で404号室を作ったワケとは何なのか。
時間が経てば経つほど、妙に気になってしょうがなくなってしまった。

ある時、ゴミ出しの際に、同じマンションの人と鉢合わせした。
僕は思い切って、404号室の存在を知っているか尋ねてみた。
「あー、あの部屋ね、そんな気になるなら覗いてみたら?いつも鍵開いてるみたいだから」
5階の住人という男性から意外な情報が手に入った。
「どうして鍵が開いているとわかったんですか?」
「ドアノブに鍵穴がないから」
言われてみれば、たしかに鍵穴がなかったような気がする。

その夜、僕は懐中電灯を持って5階にある404号室に向かった。
わざわざ夜に行く必要はなかったけど、仕事の都合で遅くなってしまった。
かと言って、確認するのを先延ばしにするのも嫌だった。
404号室のドアにはやはり鍵穴がなかった。
ノブを握って捻ってみると、抵抗なくドアが開いた。
心臓が高鳴った・・・。
404号室の中には一体何があるのか。

・・・意識を取り戻した時、僕は雑木林の藪の中で倒れていた。
わけがわからなかった。
404号室に入った後の記憶がまったくなかった。
時計を見ると深夜3時を回っていた。
およそ5時間も時間が飛んだ。
必死に思い出そうとしても、曖昧な断片映像しか浮かばない。
思い出そうとすると、何かがストップをかける。
見たものを思い出したらいけない。
そんな恐怖感があった。

とにかくこの藪を抜け出さなければ。
そう思って、身体を起こし、僕は悲鳴を上げた。
そこは、一面のお墓だった。
数えきれないほどの墓碑の数々が藪に埋もれていた。
その時、不気味な音の風が吹いた。
まるで、お墓の下に眠るモノ達の唸り声のように聞こえた。

山を下りて、
タクシーを拾いなんとか自宅に帰ることはできたが、
結局どこに迷い込んでしまったのかは、わからずじまいだった。
今回の件と関係あるのかはわからないけど、
それ以来、404号室の鍵が開いていると教えてくれた5階の住人とは一度も顔を合わせることはなかった。

最近は、いわくがありそうな場所に、不用意に立ち入らないよう気をつけている。

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