東京都あきる野市にある東京サマーランドは、
プールが有名なアミューズメントパークだ。
夏のハイシーズンには、
プールは芋洗い状態で泳ぐ隙間もないほど混雑する人気ぶりとなっている。
これは、そんなサマーランドにまつわる怖い話。
・・・もう何年も前の話になります。
夫が早い夏休みを取れたので、
当時小学5年生の息子と2年生の娘の家族4人でサマーランドに遊びにいくことにしました。
当日は快晴で絶好のプール日和でした。
夏休み前だったこともあり、
混んではいたものの泳げないほどではありませんでした。
夫と子供達が流れるプールで楽しそうにはしゃいでるのを眺めながら、
私は備えつけのビーチパラソルの下の椅子で横になっていました。
「ママ!」
息子の声にハッとなりました。
つい気持ちよくて、眠ってしまったようでした。
息子は不安そうに私を見つめています。
話を聞いてみると、
妹がさっきまで一緒だったのにいなくなったと訴えてきました。
パパは?
そうたずねると、トイレだといいます。
その時は大事だとは思いませんでした。
私は、息子にその場で待つように言って、
流れるプールの周囲を探しました。
ちょうど半周くらいした時、
プールを挟んだ向こうに、娘の姿が見えました。
血の気が一気に引きました。
娘は大人に手を引かれていたのです。
しかし、よく見ると、看護婦さんの格好をした女性でした。
まさか、怪我でもしたのだろうか。
私は大声で娘の名前を呼びましたが、声は届きませんでした。
2人は、波のプールがある園内の方へ歩いていきました。
きっと救護室だ。
私は走りました。
救護室に着くと、
応対してくれたスタッフの人に事情を話しました。
ところが、娘は来ていないといいます。
そんな筈はないと食い下がったのですが、
そもそもナース服を着た救護員はいないといいます。
確かに、救護室のスタッフの方は、
ラフな格好をした人しかいませんでした。
とりあえず、迷子放送と園内のスタッフの人達の捜索を行っていただけることになりました。
一旦、夫に事情を説明しに戻り、
場合によっては警察に連絡をしようと頭の中で考えながら園内を歩いていると、
携帯電話に見知らぬ番号から電話がかかってきました。
「・・・ママ?」
娘の声に心臓が跳ね上がる気持ちでした。
「どこにいるの!?」
「・・・病院」
そう言うと、ブツッと電話は切れました。
やはり怪我でもして、誰かが病院に連れて行ってくれたのだ。
私は、慌てて、スマホで近くの病院を検索しました。
サマーランドのすぐ近くに一軒病院がヒットしました。
私は主人に連絡をすることも忘れ、
ロッカーで車のキーを取り、
地図アプリを頼りに病院へと車を走らせました。
ところが、たどり着いたのは、
どう見ても廃墟でした。
かつては病院だったのでしょうが、
営業しているはずがありません。
ところが、引き返そうとした時、
2階の窓際に娘が立っているのが見えました。
娘はうつろな表情でこちらを見ていました。
私は娘のもとに走りました。
荒れ放題の建物内を走って、
さきほど娘を目撃した部屋にたどりつきました。
娘の背中が見えた瞬間、涙がこみあげてきました。
私は娘を抱きすくめました。
「なにがあったの、心配したのよ」
ちょうど携帯電話が鳴りました。
夫からでした。
「あなた!よかった!××がいたわ!無事よ!」
「・・・何言ってんだ、2人ともここにいるぞ?」
え・・・?
電話口から確かに「ママ、どこいるの?」と娘の声がしました。
では、私の腕の中にいる娘は・・・。
娘だと思っていたモノがゆっくりと私の方を振り返りました・・・。
・・・戻ってきた私に息子と娘が駆け寄ってきました。
夫は怪訝そうな顔をしています。
「どこにいたんだよ?一人で」
「ちょっと目眩がして、休憩室で横になってた。ごめんね」
私は、あの廃病院で見たものを何も話しませんでした。
話したところで信じてはもらえないでしょう。
後で調べてみると、私が迷い込んだ旧相武病院という場所はサマーランド裏病院と呼ばれる心霊スポットでした。
後日、いくら地図アプリを操作しても、その場所は、
病院としては表示されませんでした。
・・・なにか、悪いモノに引かれた、ということなのでしょうか。
・・・あの時、廃病院で見た光景は今も忘れられません。
娘だと思っていたモノが振り返りると、
いつのまにか部屋に無数の人影が立っていました。
病院服を着た患者、看護婦、白衣の医者たち。
全員、目がありませんでした。
目があるべき場所は、真っ黒い井戸のような穴があいているだけでした。
振り返った娘が、「ママ助けて」というと、
目玉が2つ、ぽろぽろとこぼれ落ちました。
私は悲鳴を上げて、気を失いました。
気がつくと目のない人々はいなくなっていました。
・・・最近、少し困ったことがあります。
疲れていたり、気が緩んだりすると、
目玉がぽろりと眼窩から外れるような、そんな感覚があるのです。
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