第40話「絶対見るな」

2016/09/01

これは、パーキングエリアで体験した恐ろしい出来事です。

その日、僕は大学の同級生5人とスノボに行くはずでした。
途中、高速道路のパーキングエリアで休憩を取ることになり、僕は一人でトイレに向かいました。
連休中だったのですが、なぜかそのパーキングエリアには、あまり人がいませんでした。

午前中だというのに、トイレの中は、薄暗く雰囲気がどんよりしていました。
僕は一番奥の個室に入りました。個室の中は落書きだらけで汚れていました。
便座に座ると、横の壁に、ピンポン玉くらいの穴が開いているのに気がつきました。
穴の上にマジックペンで「絶対見るな!」と書かれています。
単なるイタズラだとわかっていても、ぽっかりと空いた暗い穴を見つめるうち、穴の向こう側から誰かがこっちを見ているのではないかという気がしてきて、寒気を感じました。
もともと僕は幽霊とかが大の苦手なんです。
だから、好奇心を覚えなかったといえばウソになりますが、穴の中を覗く勇気はありませんでした。

車に戻って、同級生たちにトイレの壁に空いた穴の話をすると、ノリのいいシュンジが「じゃあ、俺、見てくる」と言ってトイレに走っていきました。
5分ほど他の同級生たちと雑談をしていると、シュンジが駆け戻ってきました。
「どうだった?」助手席の窓から僕は声をかけました。
でも、なんだかシュンジの様子がおかしいのです。
顔は真っ青で、滝のような汗をかいていました。
シュンジは、僕の前を無言で走り抜けていきました。
サイドミラーでシュンジの背中を追うと、シュンジはパーキングエリアと高速道路を隔てている木立の中へ消えていきました。
「あいつ何やってんだ?」同じようにサイドミラー越しにシュンジを見ていたドライバーのタツヤが言いました。
その時でした。

キキィィィィィィ・・・・ドン!

すさまじいブレーキ音と何かが弾き飛ばされる音が響きました。
まさか・・・!!僕たちは慌ててシュンジを追いました。
嫌な予感は当たり、血まみれのシュンジが高速道路上に倒れていました。
両手両足がおかしな方向に曲がっていて、即死だとわかりました。

高速道路は通行止めになり、パーキングエリア周辺は警察官や救急隊員のひとたちで騒然となりました。
警察官の人から事情を聞かれた時に教えてもらったのですが、シュンジの遺体からは奇妙なことに右目がなくなっていたそうです。
まるで抉り取られたかのように・・・。
シュンジは、トイレの壁の穴を覗いて、いったい何を見てしまったんでしょう。

そして、この話には実は、後日談があるんです。
ドライバーだったタツヤが知り合いにトイレの穴の話を教えたところ、その知り合いが好奇心から穴を確認しにパーキングエリアに行ったんだそうです。
さすがに穴の中をじかに見るのは怖かったので、スマホのカメラで撮影したそうです。
撮影後、知り合いからタツヤに電話がかかってきたので、タツヤは穴の中に何が見えたのか尋ねてみました。
でも、知り合いは、はぐらかすだけで教えてくれず、「画像をネットにアップする」とだけ言って、電話を切ったそうです。
その翌日、タツヤは、ニュースでその知り合いが高速道路の橋の上から飛び降り自殺をしたと知りました。
シュンジと同じように、遺体からは右目がなくなっていたそうです。

みなさん、くれぐれもインターネットでおかしな画像を見かけたら気をつけてください。
そして、もし、それらしき画像を発見した際は、穴の中にいったい何が見えるのか教えてもらえると嬉しいです。

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