長編

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【怖い話】聖地巡礼

……おかしな日だった。23時を回って東京駅近郊を流しても一人も客がつかまらない。中央区、千代田区と車を走らせてみるが、驚くほど街に人の気配が感じられない。まるで東京から人が消えたみたいだ……。タクシー業界には、たまにこういう大時化の時がある...
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【怖い話】うぶごえ #10

「どうします?」猿渡が聞いてくる。石倉は時計を見た。胎児が眠りについてからちょうど20分が過ぎていた。胎児が1時間以内に起きたことは今までなかった。少なくともあと40分はある。「手分けしよう。俺は家具の山をどける。猿渡は隣の部屋から壁に穴を...
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【怖い話】うぶごえ #09

石倉はアスファルトに塗られた赤い太線を見つめた。その線は綿貫梨沙の家から3kmの地点を示している。一歩でも線を越えれば胎児に八つ裂きにされる。まさに死線だ。石倉のところに猿渡が近づいてきた。「石倉警部。心拍110。胎児が眠りに入りました」「...
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【怖い話】うぶごえ #08

(この顔…見覚えがある……)梨沙は邪悪な笑みに歪んだ丸山の顔を見てそう感じた。岡部秀一だ。彼も最後に梨沙にこんな表情をしていた。本性を見抜かれた悪魔の顔。梨沙を利用しようとする人間達の顔。梨沙は声をあげて丸山との通話を切った。心を占めていた...
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【怖い話】うぶごえ #07

梨沙は奇妙な光景を目にしていた。銃弾は梨沙の目の前の空中で静止していた。ピピピピ……計測器の数値が150を指しアラームが鳴った。「子供が起きたぞ!撃て!撃て!」目出し帽の人物が4人集まってきて、一斉に梨沙に向かって弾丸を撃ち込んだ。だがその...
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【怖い話】うぶごえ #06

『引き返しなさい。さもなけば身の安全は保証しない』拡声器の声が響く。いくつもの赤いレーザーポインターが梨沙の頭や心臓に狙いをつけている。少しでも変な動きをすれば本当に撃たれる気がした。もしかしたら、それこそ彼らの狙いなのかもしれない。警告を...
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【怖い話】うぶごえ #05

梨沙は返事に窮した。2年間引きこもっていた人間が妊娠した。そのありえない現象の答えを探していた。だが、今、電話の向こうにその答えの一端を知っていると思われる人物が現れ、梨沙の頭は真っ白になった。電話の男はそれを悟ってか自分から話を進めた。「...
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【怖い話】うぶごえ #04

宝町を襲った火事のニュースは第一報だけ取り上げられると、芸能人のスキャンダルの続報にすぐに取って代わられた。火事の原因は失火ということらしいが、隣り合わせでもない何軒もの家々が失火で燃えるだろうか。何か肝心の情報が隠されているような気持ちの...
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【怖い話】うぶごえ #03

見知らぬ他人がいつのまにか家の中に隠れ住んでいる。昔そんなサスペンス映画を見たことがあった。知らないうちに生活を監視されているなんて想像するだけで恐ろしい。(……あの映画どんな結末だったっけ)思い出せなかったがハッピーエンドではなかった気が...
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【怖い話】うぶごえ #02

3回検査してみたところ、3回とも妊娠検査薬は陽性の反応を示した。梨沙が子供を身ごもっているのはもはや間違いない事実だった。(そんなバカな!ありえない!)これは確率の問題なんかじゃない。科学的な問題だ。2年間家から出ておらず、男性との接触がな...