怖い話

【怖い話】よく会う人

私には、よく会う人がいる。眼鏡をかけていて、髪が薄く、いかにも定年退職したサラリーマンという見た目の初老の男性で、ランニング帰りなのか必ずスパッツにランニングシャツを着ている。なぜ気になったかというと、その男性は数歩歩くたび足を止めるのだ。...
ショートホラー

【怖い話】断捨離

この頃、妻が断捨離に凝り出した。ミニマリストと呼ばれる、モノを持たない生活スタイルが流行っているらしいから、その影響なのかもしれない。散らかっていた部屋が片付くのはいいことなのだけど、あまりにモノがなくなりすぎるのでかえって心配になってきた...
怖い仕事

転職の怖い話

Fさんはブラック企業に勤めている。深夜までのサービス残業は当たり前。土日も満足に休みが取れないという労働環境で、限界を感じたFさんは転職活動を始めることにした。だが、Fさんはもう35歳。目立った経歴やスキルがあるわけでもなく出身大学も無名と...
「〜ない」シリーズ

【怖い話】予約してはいけない旅行サイト

これはTさんが大学三年生の夏に体験した怖い話。「露天風呂付の客室に泊まってみたいな」交際して1年になる彼女Mさんの何気ない一言で、Tさんは、 夏に二人で旅行にいく旅館を探すことになった。ちょうど記念日も近く、Tさんは彼女にいいところを見せた...
怖い話

【怖い話】うぶごえ #10

「どうします?」猿渡が聞いてくる。石倉は時計を見た。胎児が眠りについてからちょうど20分が過ぎていた。胎児が1時間以内に起きたことは今までなかった。少なくともあと40分はある。「手分けしよう。俺は家具の山をどける。猿渡は隣の部屋から壁に穴を...
怖い話

【怖い話】うぶごえ #09

石倉はアスファルトに塗られた赤い太線を見つめた。その線は綿貫梨沙の家から3kmの地点を示している。一歩でも線を越えれば胎児に八つ裂きにされる。まさに死線だ。石倉のところに猿渡が近づいてきた。「石倉警部。心拍110。胎児が眠りに入りました」「...
怖い話

【怖い話】うぶごえ #08

(この顔…見覚えがある……)梨沙は邪悪な笑みに歪んだ丸山の顔を見てそう感じた。岡部秀一だ。彼も最後に梨沙にこんな表情をしていた。本性を見抜かれた悪魔の顔。梨沙を利用しようとする人間達の顔。梨沙は声をあげて丸山との通話を切った。心を占めていた...
怖い話

【怖い話】うぶごえ #07

梨沙は奇妙な光景を目にしていた。銃弾は梨沙の目の前の空中で静止していた。ピピピピ……計測器の数値が150を指しアラームが鳴った。「子供が起きたぞ!撃て!撃て!」目出し帽の人物が4人集まってきて、一斉に梨沙に向かって弾丸を撃ち込んだ。だがその...
怖い話

【怖い話】うぶごえ #06

『引き返しなさい。さもなけば身の安全は保証しない』拡声器の声が響く。いくつもの赤いレーザーポインターが梨沙の頭や心臓に狙いをつけている。少しでも変な動きをすれば本当に撃たれる気がした。もしかしたら、それこそ彼らの狙いなのかもしれない。警告を...
怖い話

【怖い話】うぶごえ #05

梨沙は返事に窮した。2年間引きこもっていた人間が妊娠した。そのありえない現象の答えを探していた。だが、今、電話の向こうにその答えの一端を知っていると思われる人物が現れ、梨沙の頭は真っ白になった。電話の男はそれを悟ってか自分から話を進めた。「...