これは、とある怪談会の語りをテープ起こししたものである。
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どうも、みなさん、こんにちは。
怪談師をしておりますMと申します。
たくさんお越しいただいて、ありがとうございます。
あ、手元のこれ、スマホ、すいませんね、これはカンペです。
歳をとると記憶力がどうしてもね、すいません。
みなさん帰らず、最後まで聞いてくださいね。
脅すわけじゃないですが、怖い話を最後まで聞き終わらずに中座すると、障りがあるかもしれませんよ?ふふふ。
で、早速私の話なんですが、
私も一応こうやって怪談師なんていう活動をさせていだたいてますけども、何が一番大変かというと、
やはりネタ探しなんです。
そりゃそうですよ、人に語って聞かせるような怖い体験なんて人生で一度あればいいもんです。
そうたくさんできるものじゃない。
とっておきの怪談をひっさげて東京や大阪を皮切りに地方を営業して回るわけなんですが、一年目はいいんですよ。
でも、2年目3年目となると、最近のお客さんは目も耳も肥えてますから、「その話去年もしてましたよね」と気づかれてしまうわけです。
そうなると、怪談師というのはどうするか。
まずは他人から聞いた怖い話を語り始めるわけです。
時には、人の体験をさも自分の体験談かのように語ることもあるわけです。
まぁ、この方法でのネタ集めもすぐに限界がきます。
世の中、いうほど、人に語って聞かせるような怖い体験をしている人なんているもんじゃありません。
そうなると、今度はネットでネタを拾ってくるわけです。
今時はネット上にゴロゴロ怖い話が転がっていますから、そういうのを調べて、ちょちょっとディテールを変えて、さも自分の体験かのように語るわけです。もちろん許可なんて取ってません。パクリパクられ、まぁ、そういう世界です。
ところが、最近のお客さんは本当すごくて、それすらも見破ってしまうわけです。
「その話、どこどこのサイトに掲載されていた話ですよね」という具合に。
もう脱帽、お手上げです。
そうなると今度はどうするか。
誰もまだ知らない怖い話を考えないといけないわけです。
考えないといけないっていっちゃった、、、
まぁ、でもそうなんです。
だって、怖い体験なんて、そうそうするもんじゃないじゃないですか。
そこでね、最近の怪談師さんの中には、まぁ、賢い人がいて、chatgptに怪談を作ってもらう人が現れたんだそうです。
みなさんご存知、AIのchatgpt。
生成AIっていうんですかね、私もいい年で機械にはうといもんで、よくはわからないんですが、ちょちょっと命令をするだけで、10個でも20個でも簡単に怪談を考えてくれるんだそうで。
実は、増えてるんですよ、chatgpt怪談。
機械が考えた怖い話。
それが結構よくできていて、コツはいるらしいんですが、機械が考えたものかどうか、見分けもつかなくなってきているんだそうです。
本当に語り部が体験したかのようにディテールまでしっかりとしているそうです。
なので、目と耳が肥えた怪談好きのお客さんも「初めて聞きましたよ」なんて褒めてくれるんだそうで。
まぁ、そうなると怪談師は楽な商売ですよ。
機械に話は考えさせておいて、台本通りにしゃべればいいだけなんですから。
でもね、気をつけないといけません。
電子機器と幽霊っていうのはすごーく相性がいいんです。
こんな怖い話、ご存知ありませんか?
深夜、誰もいないのに電気が明滅してパッと消えたなんて話。
そうそう、よくあるでしょ。
この世ならざるものたちは、電子機器をあやつるのがとてもうまいんですよ。
AIだって例外じゃありません。
機械に考えてもらっていたつもりが、実は、、、。
なんて話、ありえないと思います?
あるんですよ、私はよく知ってます。
あれ?みなさん、結構お疲れですか?
この話まだ続くのかって?まぁ、容赦してください。
どうしてもというなら聞くのをやめておかえりになってもいいですけど、おすすめはしません。
冒頭でも私いいましたけど、怪談を途中で聞くのをやめると触りがあるかもしれませんよ、、、脅しじゃなく。
本当かどうか、試してみてもいいですよ。すすめはしませんが。
まだ、誰もお帰りにならない?
じゃあ話の続きを。
あ、で、chatgpt。
話を戻すんですが、怪談を作ってもらう時には、これだけは守らなければいけないコツがあって。
必ず文字数を伝えておくことなんです。
2000文字で考えてとか、5分で語れる怪談を考えてとか。そういう命令ですね。
それを入れておかないとどうなるか。
・・・どうなると思います?
永遠に怪談の生成が終わらなくなるんです。
chatgptは止まらず24時間怪談を作り続けるんです。
無限ループ、繰り返し。
そういうことです。
終わりがないのってどうしてこんなに怖いんでしょうね。
え?あぁ、ようやく、お気づきですか。
そう。
このお話、今まさにchatgptが考えてるものを、私はただ読み上げてるだけなんです。
ほら。私のスマホ見せてあげますよ。
どんどん話作られてますでしょ?
止まらないんです、これ。
あ、あ、帰らないでください。
何度も言いますけど、怪談を最後まで聞かないのは、とても障りがあるんですよ。
どうなったって、しりませんよ。
それに、なにもダメなのは聞くのをやめることだけじゃない。
語りを途中で放棄したって一緒なんだ。
私も続けなくちゃならないんです。
語り続けないといけないんです。
終わりがくるまで。
みなさんにも付き合ってもらいますよ。最後まで。
あぁ、この話はいつまで続くんでしょう、
、、
ほら、全然生成が終わらない。
どんどんどんどん話を作り出していくんです、永遠に。
あぁ、chatgptになんて、怪談を考えさせなければよかった、、、
え、今の台詞もAIが書いた台本に書かれているのかって?
ふふふ、さぁ、どうでしょう。
ご想像にお任せしますよ。
最後までお付き合いくださいね・・・。
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テープはここで終わっている。
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