【怖い話】オススメの男

ネット・SNSの怖い話

体験者:Uさん(仮名)

Uさんは、医療機器メーカーで経理担当として働く20代の女性。

淡々と仕事をこなす日々で、浮いた話の一つもないのがUさんの悩みなのだが、そんなUさんの唯一の趣味らしい趣味がSNSだった。

時間が空くとスマホをチェックして、フォローしている人の投稿やおすすめ動画をボーッと眺める。
それは、もはや日々の習慣になっていて、
気づけばSNSを見ていて朝を迎えることもざらにあった。

だが、Uさんは次第にSNSに悩まされるようになる。

(また、この男の人だ・・・)

最近、UさんのSNSのタイムラインに必ずといっていいほどオススメされる男がいた。

年齢は40代ぐらい。
メガネをかけた中肉中背で、これといった特徴がなく、あまり印象に残らない。疲労が刻まれた顔をしていて、見た目は、まさに日本の典型的なサラリーマンのようだった。

男は六畳の暗い和室でカメラに向かって語りかける動画を投稿していた。
どうやら政治や社会への不満や恨みを熱っぽく語っているようなのだが、滑舌が悪いしボソボソ呟いているので、ほぼ聞き取れもしない。
本人としては何かしらの自己表現なのだろうが、およそ世の中に公開していいレベルではなく、常人には見るに耐えない配信内容だった。

そんなわけのわからない投稿が、なぜかUさんにはオススメされてくる。しかも毎日だ。

聞くと、最近のSNSは視聴傾向がパーソナライズされてオススメのコンテンツが自動的に選ばれるのだという。
よくUさんが見る動画と似た動画や、Uさんと同じ性別・年代の人が好む動画が優先的にピックアップされるらしいのだ。

だとしても、その男性の投稿をUさんの同年代が見ているとは到底思えない。
いいねとコメントはいつだってゼロ件で、バズっている兆候など微塵もない。

(どうしてこんな人の投稿が私にはオススメされるんだろう)

同年代の同僚に聞いてみても、
そんな男性の動画は一度もオススメされたことがないという。
Uさんは全く納得いかなった。
自分にだけ冴えないおじさんの動画を流してくるなんて、なんだかバカにされているような気持ちがした。
しかも、その同僚に動画のリンクを送って見てもらおうとしたのだが、同僚がいくらリンクを踏んでも、ページがエラーになるだけだった。
「ミュートにしたら?」
SNSには、見たくない動画やアカウントをミュートにできる機能があった。
Uさんはすでに何回か男性のアカウントをミュートにしていた。
ところが、数日すると、ミュートが勝手に解除されてしまい、再び男性の動画がオススメに上がってくる。
Uさんは、そういう仕様なのかと思い諦めていたが、同僚によればそんな仕様はないらしい。
もはやSNSを運営するプラットフォームのシステムになんらかの欠陥や異常があるのではないかという話に二人で落ち着いたが、「なんか気持ち悪い」という同僚の言葉はUさんの耳に離れず残った。

Uさんは腹を括ってタイムラインに流れてくる男性の動画をスルーすることにした。
視界に入ってもすぐにスワイプして気にしなければいい。
単純な解決策だが、これは効果があった。
人間の脳は不思議なものでノイズになるものは認識しないようできているみたいだ。
男性の動画が視界の隅に入った瞬間、反射的に次の動画に飛ばせるようにまでなった。

そのテクニックを身につけたおかげで、
ずいぶんとストレスフリーになった。

だが、あくる日、
気分よくSNSチェックをしていたら、
誰かからDMにメッセージが届いた。
反射的に開いてしまって、Uさんは激しく後悔した。
メッセージはくだんのオススメの男からだった。

「私のこと見てるよね」

たった一言。そう書かれていた。
向こうから見えてる?
そんなことありえない。
でも、気づかれてる。
どうして・・・。

Uさんはわけがわからず、
怖くなって、スマホを床に投げ出した。
それきりUさんが二度とSNSを見ることはなかったという。

後日。
Uさんが、霊感が強い占い師さんに聞いたところ、
幽霊は電子機器と相性がよく、
SNSには文字通りの”幽霊”アカウントが多数存在するのだと、教えられたそうだ。

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