【怖い話】不審死

刑事だった叔父から聞いた怖い話です。

叔父は、ある時、変死体発見の一報を受け現場に駆けつけました。
雑居ビルの前に頭から血を流して倒れた女性の遺体がありました。
大方、ビルの屋上から飛び降りた自殺だろうと思われたのですが、叔父は現場を調べておかしなことに気づきました。
女性が飛び降りたと思われる雑居ビルは今は使われておらず、最近ヒトが立ち入った感じがしなかったのです。
鑑識にも調べてもらいましたが、女性がビルに侵入した痕跡は見つかりませんでした。
ビルの屋上も同様で、女性の痕跡は見つかりませんでした。
遺族や友人は、女性が自殺する理由が全く思い当たらないと口を揃えていいました。

叔父は、現場検証でわかったことを理由に、自殺ではない可能性を訴えましたが、付近の防犯カメラの映像には事件前後で死亡した女性以外の人の姿が映っておらず、早々に自殺と断定され、捜査は行われませんでした。

モヤモヤが晴れない叔父でしたが、ある日、女性の解剖を担当した法医学者の先生に署内で顔を合わせ、話を聞くことができました。
先生も、女性の自殺に少し引っかかっているようでした。
頭を打ったことが致命傷なのは間違いないけれど、地面に頭を打ちつけたのではなく、上から衝撃を受けた可能性も捨てきれないというのです。
「おかしな話だけど、似てるんだよな」
「なににです?」
「ほら、自殺の巻き添えになる人がいるだろう。偶然、下を歩いていて、落ちてきた自殺者に衝突される通行人さ。似てるんだよ、その人たちの傷と」
「え・・・」
「ま、肝心の自殺者がいないんだから、今回はありえないけどさ」

法医学の先生の言葉が気になった叔父は、現場の雑居ビルについて調べてみました。
すると、そのビルが使われなくなる前、屋上から自殺した女性がいたことがわかりました。
しかも、今回の事件が起きたのは、ちょうどその自殺した女性の命日だったのです。
もしかしたら、亡くなった女性は、通りを歩いていた時に、飛び降り自殺を繰り返す霊とたまたまぶつかってしまったのかもしれない、、、
そんな荒唐無稽な考えが叔父の頭をよぎりました。

誰も信じてくれるわけがないですし叔父はそのことを自分の胸にソッとしまっておいたそうです。
刑事をやっていると、そういった奇妙な事件に遭遇することがしばしばあるのだと、叔父は言います。

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