兼六園の怖い話

石川県金沢市にある兼六園は、水戸市の偕楽園、岡山市の後楽園とならぶ日本三名園の一つだ。
江戸時代を代表する大名庭園であり、四季折々の美しさを楽しめる庭園として、年間300万人近く訪れる人気の観光スポットとなっている。

そんな兼六園にも、ちょっとしたいわくつきのスポットがある。
「小糸桜」と呼ばれる桜で、一見、普通の桜なのだが、よく見ると、桜の根本が井桁で囲われている。
小糸桜は、井戸の中から伸びているのだ。
言い伝えによれば、その昔、小糸という女中がいて、主人に従わなかったため切り捨てられ、井戸に投げ捨てられたという。
その小糸の遺体が井戸の中で桜に化身したといわれていて、悲しくも風雅な言い伝えとなって残っている。

金沢在住の会社員Kさんは、カメラが趣味で、毎年、兼六園を訪れては四季折々の風景を記録に残していた。
ある時、Kさんが今まで撮った写真を整理していると奇妙な写真を見つけた。
「小糸桜」を撮ったものなのだが、桜の木が写っているはずの部分が、ピントがあわずブレていた。
まるで素早く動く物体にシャッター速度が追いついていないかのようだった。
そして、井戸のそばには、背中を向けて立つ着物姿の女性が立っていた。
小糸桜のいわくを知っていたKさんには、ピンボケした桜の枝の先に立つ女性が、亡くなった小糸が桜の木から人間に変化する場面を捉えたかのように見えたという。
他にも何枚も小糸桜を撮った写真はあったが、奇妙な写真はそれ一枚だけだった。
もしかしたら、小糸は今もときおり桜の木から人間に戻って、兼六園の園内を散策しているのかもしれない・・・。

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