【怖い話】ベビーシッターはYouTube

最近、YouTubeにベビーシッター代わりをさせる夫婦が増えているという。
まだベビーカーに乗った子供でもスマホを与えておけば、YouTubeの子供向け動画をおとなしく見ているからだという。

Yさん夫婦も、その中の1人だった。
買い物中や夕食を作っている時、夫婦水入らずの時間を過ごしたい時、2歳になる1人息子にYouTubeを見せておく。
子供は、1時間でも2時間でもあきずにアンパンマンやしまじろうが登場する動画を見続けている。
教育上あまりよくないかもしれないという気持ちは少しあったが、簡単におとなしくなるので、やめられずにいた。

ところが、YouTubeにベビーシッター代わりをさせるようになって半年ほどたったころだ。
息子が変わった行動を取るようになった。
Yさん夫妻があやしていると、息子が夫妻ではなく部屋の宙を見るようになった。
天井の方に虫か何かでも飛んでいるように、上下左右に目線を動かす。
Yさん夫婦が振り返ってみてももちろん何もいない。

他にもおかしなことがあった。
夜泣きの声で目を覚ますと、ベビーベッドで泣いている息子の傍らに奥さんのスマホがあった。
奥さんは目覚ましをかけて枕元に置いたおぼえがはっきりとあった。
はいはいするのがやっとの息子が自分でベビーベッドを抜け出して、スマホを取りにきたというのか。
しかも、息子は解除コードを知らないのに、ロックまで解除され、スマホでYouTubeの動画が再生されていた。
顔も知らない若いYouTuberが、うるさくしゃべっている動画だった。
わけがわからなすぎて、背筋が寒くなるような気持ち悪さを夫妻は感じた。

しかも、そういうことが一度や二度ではなかった。
夫妻は、息子にYouTubeを見せるのをやめた。
すると、それがよかったのか、奇妙な出来事はやんだという。

ところが、日常が戻ってきてから一週間ほどして、それは唐突に起きた。
奥さんがお隣さんと玄関口で立ち話をしてリビングに戻ると、ベッドで眠っていたはずの息子がなぜかソファに座っていた。
息子の視線は大画面のテレビに向けられていた。
テレビには、女の顔が大写しになっていた。
ボサボサの髪に、伸びた前髪のせいで目が隠れている。女の背後に映る部屋はゴミ屋敷の有様だった。
年齢は奥さんと同じ30代にも見えるし、60を超えた老婆にも見えた。
YouTube動画だというのはすぐにはわかった。
最近は、テレビでもYouTubeを見られる。
けど、奥さんは息子に一度もテレビでYouTubeを見せたことがなかった。
なにより、画面に映った女が不気味だった。
ずっと張りついたような笑みを浮かべながら小声で何か囁いている。
女が画面に向かってぼそぼそとしゃべるたび、息子がきゃっきゃっと反応している。
まるで、画面の中の女が息子をあやしているかのようだった。
奥さんは慌ててテレビを消した。
するた、息子は大泣きした。

旦那さんが帰ってから、夫妻は一緒に息子が何の動画を見ていたのか確認しようということになった。
テレビをつけ、YouTubeにアクセスする。
けど、いくら探しても、息子が見ていたあの女の動画にたどりつくことはできなかった。
そもそも、現実に存在する動画だったのか。
奥さんは、息子さんが女の動画を見ている時、そのまま放っておいたら、画面の中の女が息子を連れに来るという恐怖をはっきり感じたという。

YouTube自体へのアクセスをできないようテレビとスマホを設定すると、それ以降、気味の悪い出来事は起きなくなったそうだ。

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