錦糸町のホテルの怖い話

2019/11/15

これは私が錦糸町のビジネスホテルに宿泊した時に体験した怖い話です。

ファンだったアイドルのライブのためにホテルをとって友達と上京したのですが、ホテルの部屋に入った瞬間、言い知れぬ寒気がしました。
部屋はいたって普通のシングルルームで、古い建物でもなく、きれいな感じだったのですが、窓際の右側の天井の隅が妙に気になりました。
ライトがあたりづらい場所なので、薄ぼんやりはしていましたが、それだけです。
はじめはちょっと気になる程度でした。

明日は早くから動いてグッズを買いに行こうと友達と話していたので、今夜は早めに寝ようと思っていました。
シャワーを浴びて、すぐにベッドに入りました。
ベッドサイドの明かりだけにしてスマホでSNSなど見ていたら、いきなりゾワゾワッと背中が寒くなりました。
慌てて振り返りましたが、誰かがいるわけでもありません。
ただ、部屋に入った時と同じく、天井の隅が妙に気になりました。
慣れない遠出で神経が昂っているのかなと思い、無理やり寝ようとしました。
けど、目を瞑ってしばらくすると、気配といいますか、言葉では言い表しづらいのですが、なんか嫌だなという感じがして、目が冴えてしまいました。
やはり、どうしても天井の隅が気になります。
怖がりな性分なので、一度気になってしまうと気を逸らせなくなりました。
私は部屋の明かりをつけおくことにしました。
明るくなったことで怖さもだいぶなくなり、明日の予定など頭でシュミレーションするうちに、まどろみ始めました。
が、ハッと目が覚めました。
時計を見ると、30分ほど経過していました。
なんで目が覚めてしまったんだろうと思い、周りをキョロキョロ見てみました。
天井の隅に目が留まりました。
なにかが変なわけではありませんでしたが、なぜか気になりました。
さっきより天井の隅の暗がりが、より濃くなったような気はしましたが、気のせいかもしれません。
早く寝たいのに、と思って、イライラしました。
私は気をまぎらわそうと隣の部屋で眠っている友達にLINEをしました。
まだ起きているか自信はありませんでしたが、返事はすぐに来ました。
『どうした?』
『寝れなくて』
『テレビ消しなよー』
一瞬わけがわからず文字を打つ手が止まりました。
『テレビ?』
『つけてるでしょ?話し声がすごい聞こえてる』
『つけてないよ!』
『うそ、女の人の声がするよー?』
私は天井の隅を振り返りました。
暗がりの中で、何かがザワザワとざわめいている気がしてきました。
『部屋行っていい?』
怖くなって、私は隣の友達の部屋に避難しました。
友達の部屋に入ると、たしかに私の部屋の方から女の人の声が聞こえました。
何を言っているのかは聞き取れませんが、泣いているような怒っているような、そんな声でした。
友達に事情を説明すると、友達も怖がってしまい、私達は2人で肩を寄せ合いながらベッドに入りました。
気がつくと2人とも寝ていて、起きた時には女の人の声はやんでいました。
もう二度と私の部屋に戻りたくはありませんでしたが、荷物を取りにいかないとなりません。
私は友達に同行してもらって、隣の部屋に戻りました。
「なんか空気が違う」
部屋に入るなり友達が言いました。
私は急いで荷物をスーツケースにしまいました。
ルームキーを取って、部屋を出ようとした時、ふいにまた寒気が背中に走りました。
振り返ると、天井の隅の暗がりが視界に入りました。
「ね、早く出よう」
友達が入口から一刻も早く出ようという感じで言いました。
私は走って部屋を出ました。

目的だったらアイドルのライブを楽しんで、ホテルのことなど忘れかけていた帰りの新幹線の中。
友達がふと言いました。
「実はさ、あの部屋出る時、声が聞こえた気がしたんだよね」
「え・・なんて?」
「・・・ひとりにしないでって」
「・・・」
昔、あの部屋では何かあったのかもしれません。

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