中古スマホの怖い話

大学生のYさんの話。
Yさんは親元を離れ一人暮らしをしていて、実家の仕送りはあまりあてにできず、バイトで生活費と学費を工面していた。
苦学生のYさんは毎月の出費をどうにかおさえようといろいろ工夫していた。
ところがある日、高校から使っていたスマホが故障してしまい、買い替えなくてはいけなくなった。
大手通信会社で買うと、月割りとはいえ相当額の出費となる。
そこで、Yさんは中古スマホに目をつけた。
近所のジャンク品を取り扱う店に行き、古い機種を格安で手に入れた。
また格安SIMを契約したことで、毎月の通信費が以前より安くなったので、前の端末が壊れてよかったかもとYさんは思った。

新しいスマホを使い始めて2週間ほど経ったある日、深夜に知らない番号から電話がかかってきた。
反射的にYさんは電話を取った。
「もしもし・・・」
相手は何もしゃべらない。
サーという機械音が流れるだけだった。
何度か呼びかけてYさんは通話を切った。

それから、何度か同じ番号から電話がかかってきたが、いつも相手が何もしゃべらないので電話がかかってきても無視するようにした。
それでも、一週間に一度くらいの頻度で同じ相手から電話がかかってくる。
我慢の限界が来たYさんは、その番号を着信拒否にした。

これで大丈夫だろうと思ったYさんだったけど、ある日、大学の知り合いに電話をかけようとアドレス帳を見ていて、例の着信拒否した番号が登録されているのに気がついた。
Yさんは登録した覚えなどなかった。
しかも、その登録されている名前というのが、「私」という漢字一文字で、なんだか気味が悪かった。
即座に、アドレス帳から、その番号を削除した。

その同じ日の深夜。
うたた寝していたYさんは、電話の音でハッと目が覚めた。
表示を見て、Yさんはゾッとした。
着信拒否にした例の番号だった。
しかも登録削除したはずの「私」という登録名まで出ていた。
操作ミスしてちゃんと設定や削除ができていなかったのかと考えたけど、どうにも釈然としない。
この際、相手にきっちり「かけてくるな」と伝えようと思い、Yさんは電話を取った。
「もしもし、あんた誰だよ、イタズラ電話はやめろよ!もうかけてくるな!」
一気にまくしたてたYさんの身に、次の瞬間、身が凍る恐怖が襲いかかった。
『もしもし、あんた誰だよ、イタズラ電話はやめろよ!もうかけてくるな!』
電話の向こうから少しずれてYさん自身の声が聞こえてきたのだ。
つまり、電話の相手はYさんのすぐ近く、この部屋にいることになる。
背筋に寒気が走った。
・・・後ろに誰かいる?
けど、振り向けない。
振り向いたら終わりな気がした。
汗が頬を伝うのがわかった。
その時、だった。

「私・・・やっと見つけた・・・」

耳元で女の声がした。
Yさんは叫び声を上げて身をよじって部屋の隅に逃げた。
恐る恐る目を開けると、部屋には誰の姿もなく通話は切れていた。

・・・もしかして、この中古端末のせいなのか。
スマホを見つめるうち、Yさんはそう思い至った。
考えてみれば、おかしなことが起こり始めたのは、端末を新しくしてからだ。
中古なので、どんな持ち主が使っていたものかはわからない。
いわくつきの端末だったのかもしれない。

Yさんは、すぐに手放すことも考えたけど、後でどんな障りがあるかわからない。
結局、そのスマホは解約してお寺で供養してもらうことにした。
結果、供養料で余計な出費となってしまったが、その後新しく買い替えたスマホではおかしなことが起きていないという。

#470

-怖い話