山手線の怖い話

 

大学の同級生と朝まで飲んで、山手線の始発で家に帰った時のことだ。
乗り込んだ車両はガラガラで人がいなかった。
端の席に座ると、疲労と眠気が一気に襲ってきた。
うつらうつらしていると、向かいにスーツを着た会社員風の男性が乗り込んでくるのがうっすら見えた。
男性はカバンからネクタイを取り出した。
こんな朝から出社とか大変だなとぼんやり思ったのを覚えている。
首に巻くのかと思ったら、違った。
網棚のポールにネクタイを固定したかと思ったら、先を輪にして、その輪に自分の首をかけ・・・
その瞬間、ガクンと電車が揺れハッとした。

・・・向かいの席の男性は消えていた。
けど、網棚に結ばれ先が輪になったネクタイはそのまま残っていて、ユラユラと揺れていた。
僕は叫び出しそうになるのをこらえて、次の停車駅で電車を降りた。
この体験を、誰に話しても眠っていて夢を見たのだろうと信じてもらえない。

#431

-怖い話, 電車の怖い話