東成田駅の怖い話

 

これは鉄道好きの友人Tから聞いた怖い話です。

Tは週末ともなればカメラ片手に全国に撮影に赴く"撮り鉄"で、ある時、秘境駅の1つに数えられる東成田駅に行ってみようと思いたったそうです。

東成田駅は、旧成田空港駅で、京成線が本線になるまでは東成田駅がある場所からバスで成田空港に向かうのが一般的だったそうです。
今では空港路線としてはほとんど使われなくなり、利用客も少なく秘境駅と呼ばれているのだそうです。

そんな東成田駅は、成田空港の第2ターミナルがある空港第2ビル駅と地下道で直結していて、Tも京成線で空港第2ビル駅まで行き、地下道を通って東成田駅までいくつもりでした。

その地下道は全長500mもあり、照明で明るく照らされているものの、利用する人はほとんどおらず寂しい感じがしたそうです。

前も後ろもどこまでも続く地下道トンネル。
昼間でも怖くないといえば嘘でした。

半分ほど歩いたでしょうか。
前方に初めて人影が見えました。
Tは、少しホッとしましたが、近づいていくにつれ、それが普通の人でないのがわかりました。
背が小さい中年男性だったのですが、ヨレヨレの黒いジャンパーに、伸びきった髪は脂ぎっていました。
ホームレスが暖を求めて迷い込んでしまったのだろうか、Tはそう思ったそうです。
しかも、男性は壁に顔を向けて突っ立っていて、それもまた気味悪く見えました。
男性が立つ辺りだけ陰気な空気が漂っているようにも感じました。

Tは足早に男性の横を通り過ぎ、東成田駅に向かいました。

ようやく東成田駅に出ると、噂に聞いていた通りの秘境ぶりでした。
空港駅として使われていただけあって構内はとても広いのに、ガランとしてひとけがまったくありません。
通行止めになっている場所もあって、何も知らなければ廃墟だと思うほどの荒みぶりでした。
時刻表を見ると電車は1時間に2、3本しか走っていません。
だだっ広い駅構内に一人だけ。
Tは心もとなく、不安になってきました。
急いで、カメラで東成田駅の構内の様子を撮影しました。

一通り撮影し終わると、再び空港第2ビル駅に続く地下道に向かいました。
まだ、あのホームレス風の男性がいたら嫌だなと思いながら戻りましたが、男性はいなくなっていました。
よかったと思い、地下道を進んでいたのですが、地下道の終わりが見えた頃、急に背中に寒気を感じたそうです。
振り返ると、遠くに例のホームレス風の男性がこちらを向いて立っているのが見えました。
・・・すれ違わなかったのに、なぜ?
ざわざわする気持ち悪さを感じ、Tは空港第2ビル駅まで逃げるように走りました。
空港第2ビル駅構内のざわめきの中に飛び込むと、ようやく気持ちが落ち着きました。

Tは帰る前に、近くにあったベンチに腰掛け、撮影した写真を確認しました。
カメラを操作する手が震えました。
東成田駅の構内で撮影した写真に写り込んでいたのです。
地下道にいたホームレス風の男性が。
撮影するTをうかがうように物陰から少し身体を出して、カメラの方を睨みつけるように顔を向けていました。
角度を変えて撮影した、どの写真にも男性は写り込んでいました。
写してはいけないものを撮ってしまった。
Tは慌てて撮影データを全て消去しました。
それが原因かわかりませんが、その日以来、カメラが調子が悪くなり、買い換えることになったそうです。

東成田駅にだけは二度と近づかない。
Tはそう心に誓っているそうです。

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