将棋仲間から聞いた怖い話

 

これは将棋仲間のCさんから聞いた怖い話です。

Cさんは建設会社の営業マンとして定年まで勤め上げた人で、
引退後は趣味の将棋に興じていて、
私達は将棋場で知り合いました。

その日、私はCさんの自宅に招かれて、
将棋を指していました。
すると、Cさんがポツリと言いました。
「ちょっと怖い話してもいいかな?」
「怖い話ですか?Cさんがそういう話が好きとは意外ですね」
「いや、オバケなんてのは昔から信じないタチなんだけど、ちょっと不思議な話があってね」
「おもしろそうですね。聞かせてください」

そして、Cさんは話し始めました。

はじまりは一本の電話だったそうです。
「ひさしぶりだな、C。オレがわかるか」
相手は小学生の同級生でした。
実に四半世紀以上ぶりでした。
仕事が忙しく同窓会などにほとんど参加しなかったCさんは、懐かしさと旧友に忘れられていなかった嬉しさで、こみ上げてくるものがあったといいます。
ただ、いったい何の用事で電話をかけてきたのかCさんは気になりました。
他愛ない思い出話を切り上げCさんは尋ねました。
「ところで、急に電話してきたのはなぜなんだ?」
すると同級生はいいました。
「・・・話がしたいんだ。お前を迎えにいくよ。待っててくれ」
そういうと唐突に電話は切られました。
電話が切れる直前、大勢の子供の笑い声が聞こえたといいます。

「・・・その電話から3日も経たずに、別の同級生から連絡が入ってね。電話してきた同級生が亡くなったというんだ。けど、話を聞くとどうもおかしい。亡くなったのは、電話がかかってきた1日以上も前なんだよ・・・つまり死者からの電話だったってことになるのかな」
「死者からの電話、ですか・・・それは確かに怖いですね」
「迎えにいくよ、っていう言葉が引っかかってね。つい誰かに聞いて欲しくなった」
その時、突然、Cさんの家のインターフォンが鳴りました。
2人とも身体が跳ね上がるほど驚きました。

Cさんが玄関に応対に向かい、ほどなくして戻ってきました。
けれど、どこか浮かない顔をしています。
「どうしました?」
「・・・誰もいなかったよ」
「え?」
死者からの電話、迎えに行くよ、そういった言葉が頭をよぎり、
なんだか薄気味悪くなりました。

Cさんの家で将棋をさしてから数日後。
自宅に電話がかかってきました。
Cさんからでした。
「Cさん。どうしたんですか?」
「将棋をさそう・・・迎えに行くから待っててくれ」
Cさんはそう言うと、ブツッと電話が切れました。
切れる直前、電話の向こうで大勢の小さい子供が笑う声が聞こえたような気がしました。
全身を寒気が走りました。
慌ててCさんのご自宅に電話をかけました。
恐れていた予感は的中しました。
応対した奥さんから、Cさんの突然の死を教えられました。

死者からの電話、迎えに行くよ・・・。

Cさんの電話から1ヶ月ほど経ちます。
私は毎夜眠れぬ夜を過ごしております・・・。

#404

-怖い話