【怖い話】開かずのトイレ

2018/09/09

 

僕が通う中学校には「開かずのトイレ」があります。
北棟一階の男子トイレの一番奥の個室だけドアが固く閉ざされていて使えないようになっているのです。
北棟一階は倉庫や資料室など授業であまり使われない部屋が多く集まっていて、ひとけがあまりないので、不気味な噂が数多くありました。

開かずの個室をノックすると誰もいないはずなのにノックが返ってくるとか、「誰かいますか?」と呼びかけると返事が聞こえるなど、開かずのトイレにまつわる怪談を知らない生徒はいませんでした。

ある日、噂が本当なのか確かめてみようということになり、クラスの男子数人で日が落ちた北棟一階のトイレに肝試しに行くことになりました。

トイレはどこも同じ構造のはずなのに、ひっそりとした北棟一階のトイレはどこか空気が違う感じがしました。
やはり一番奥の個室だけドアがしまっていました。
押しても引いても開く気配はありません。
他の個室は上が開いていてよじ登れば中が見えるのですが、一番奥の個室だけ、なぜか天井まで板張りされていて覗けないようになっていました。
「じゃあまずはノックだな」
肝試しを言い出したAくんが開かずの個室をノックしました。

緊張なのかゾクゾクと寒気を感じました。
しばらくまっても何も反応はありませんでした。
「・・次は声をかけてみるぞ。誰かいますか?」
蛇口から漏れた水がポタポタと垂れる音がするだけで反応はありませんでした。

「やっぱり噂はデマか」
緊張が解けて僕たちはおかしくもないのに笑い合いました。
「小便して帰ろうぜ」
僕たちは並んで用を足しました。
Bくんが下手くそな口笛を吹き始めました。

その時です・・・

キィィィィ

獣の鳴き声のような耳障りな音が用を足す僕たちの後ろから聞こえ出しました。
何の音かすぐにわかりましたが、ありえないという認めたくない気持ちで後ろを振り返れませんでした。
「お・・・おい、今ドア開いてないか?」
Aくんが小便器で用を足しながら言いました。
「開いてる気がする」
Bくんも壁を向いたまま言いました。
誰も後ろを振り返りませんでした。

一番個室に近い位置にいるのは僕でした。
用を足し終えた僕は、恐怖を振り払い、小さく後ろを振り返ろうとしました。

「・・・うわぁぁぁ!」
その時、僕の隣で用を足していたCくんが悲鳴を上げてトイレから逃げました。

僕達はCくんを追いかけてトイレを出ました。
Cくんは廊下に座りこんでいました。
「おい、中見たんだろ?何があったんだよ」
「・・・わからない。お社みたいなのが見えたんだ」
「オヤシロ?」
「神社とかによくあるだろ!神様を祀る祭壇みたいなヤツ」
「トイレの個室の中に?」
「本当だって!」

僕たちは、互いの身体をくっつけて身を守るようにして、確認しにトイレに戻りました。
けど、一番奥の個室のドアは固く閉ざされていて、二度と開くことはありませんでした。

Cくんから相談を受けたのは、それから一週間くらい経った時でした。
「夜、トイレに行くとさ、誰かがノックするんだよ。家族に聞いても誰もやってないって。毎晩毎晩誰かがノックするんだ」
その現象は今も続いているといいます。
今度、僕たちは、Cくんの家に行き、ノックするモノの正体を探ろうと思っています・・・。

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