【怖い話】駅前交番

 

先日のことです。
駅前にある交番の前を、
高校生の二人乗り自転車が走っていくのを見かけました。
けれど、交番前に立っていたお巡りさんは、注意することもしませんでした。
小さな子を持つ親として自転車の二人乗りは見過ごせない存在です。
なのに、地域の安全を守る警察が見て見ぬフリをするなんて。
私は、交番前に立っていた若いお巡りさんに一言いわないと気がすまず、「どうしてさっきの2人乗り自転車を注意しないんですか」と声をかけました。
すると、若いお巡りさんは、ちょっと考えてから答えました。
「さきほどは一人乗りでしたよ?」
嘘・・・。私ははっきり見たのに。
私が見たのは、幽霊だったとでもいうのでしょうか。

そんなことがあってからしばらくして、駅前交番の若いお巡りさんが逮捕されたらしいと噂を聞きました。
落とし物として交番に届いた財布やスマホなど金目のものを着服していたのが発覚したというのです。
そんないい加減な人が警察官をやっていたのかと怖くなった一方、
あの時の2人乗り自転車は気づきながら見逃したのに、私が指摘したから、1人乗りだったと言い逃れたのだと今更思い至りました。
数ヶ月、本当に幽霊を見たのかと悶々とさせられたので、余計に腹が立ちました。

数日後。
駅前を通りかかると、交番に新しいお巡りさんが配属されていました。
その時、偶然、また2人乗り自転車の高校生が前を通りかかったのですが、新しいお巡りさんもスルーしました。
「ちょっと!」
私は呆れて新人のお巡りさんに声をかけました。
どうして2人乗りを見逃すのかと詰め寄ると、お巡りさんは不思議そうに言いました。
「ですが、今の自転車は一人乗りでしたよ?」

#333

-怖い仕事, 怖い話