【都市伝説】深夜12時の合わせ鏡

 

昔から、合わせ鏡は不吉だといわれている。

僕が中学生の時、
『深夜12時に東西南北に鏡を置いて合わせ鏡をやると、鏡の奥に自分の死に顔が映る』
という怖い話がはやった。

1泊2日の林間学校で保養施設に行った時、
多目的室にキャスター付きの全身鏡がいくつもそなえつけられているのを見たクラスメイトのEが、僕ともう一人のクラスメイト・Fに言った。
「なあ、今夜、合わせ鏡の噂が本当か確かめてみないか?」

僕たち3人は、夜の11:30過ぎ部屋を抜け出して、多目的室に向かった。
幸い先生達の見回りにはでくわさなかった。

シンと静まりかえり真っ暗な多目的室は、
昼間見た時とは雰囲気がうってかわっていた。

電気をつけるわけにもいかないし、
僕はだんだん怖くなってきて、
合わせ鏡なんてしに来たことを後悔し始めていた。

けど、EとFはノリノリで、
全身鏡を東西南北にセッティングした。

12時ちょうどになるタイミングを待ち、
僕たち3人は全身鏡が作り出す合わせ鏡の中に飛び込んだ。
無限に鏡と自分の姿が続く不思議な世界。
奥に行けば行くほど、自分の姿が小さくなっていく。
けど、変わったものは何も映っていない。
やっぱり噂にすぎなかったんだなとホッとして、
他の2人の様子をうかがうと、どうもおかしい。
2人とも脂汗を浮かべガタガタ震えていた。
そして、いきなり「うわー」と叫び声を上げて、2人とも逃げだした。
僕はわけがわからず、2人の後を追った。

運悪く、廊下で僕たちは先生の見回りに見つかってしまい、こっぴどく怒られることになった。

30分ほど説教され、やっと部屋に戻る許可が出た。

部屋に戻っても、
EもFもまだ様子がおかしかった。
「2人とも、合わせ鏡に何が見えたんだ?」
僕は2人にたずねた。

Eが鏡の中に見たのは、
皺だらけで鼻にチューブをつけた老人だったという。
Fは、血だらけの男の顔が鏡の奥に見えたという。
2人とも、鏡の中の人物は、年をとった自分自身だったような気がしたと言った。
『深夜12時に合わせ鏡をすると、自分の死に顔が見える』という噂は本当だったのだ。

けど、どうして僕にだけ何も見えなかったのか。
怖い思いをしなくてよかったと思いつつも、
長年、不思議だった。

30代になって最近、ようやくその謎が、恐ろしい形で解けることになった。

僕は飲酒運転の車にはね飛ばされ、後遺症で両目の視力を失った。
どうやら僕には自分の死に顔が見えないから、
合わせ鏡に何も映らなかったようだ・・・。

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