【怖い話】呪い箱

 

我が家では、奇妙な怪奇現象が頻発している。
深夜の家鳴り、ポルターガイスト現象、家を彷徨う謎の気配、布団の上に馬乗りになる人影。
家族みんなが何かしらの恐怖体験を経験していた。
なので、 いつも家庭内はピリピリしていた。
両親は毎日のように喧嘩して、いつ離婚してもおかしくない状態だし、
僕の妹は心をとざしてしゃべらなくなった。

このままじゃ僕の家庭は崩壊する。
そう思った僕は専門家に頼ることにした。
といっても、twitterで見つけた本物かどうかも定かではない霊媒師さんだったけど。

「この家からは、よくないものを感じる」
霊媒師さんは、僕の家を見上げて、そうつぶやいた。
カッチリとしたスーツに、キレイに整髪料で整えられた髪。
霊媒師というよりは普通の会社員に見えた。

霊媒師さんは、家の中をひととおり見て回った。
心配させると思って家族がいない時に来てもらった。
霊媒師さんは、ときおり難しい顔をして、考え込むようにしていた。

「あぁ、ここだ」
霊媒師さんは、そう言って、両親の寝室のタンスを動かして、できた隙間に手を突っ込んだ。
隙間から、小さな箱が出てきた。
漆塗りの黒い漆器で、蔦のような金の文様があった。
箱は紐で厳重に縛られていた。
霊媒師さんは、紐を解いて箱を開けた。
紙で包まれた何かがあった。
包みの中身を見て、僕はギョッとした。
人間の髪の毛や爪と虫の死骸が、これでもかと詰め込まれていた。

「怪奇現象の原因はこれでしょうね。この箱を供養すれば、おさまるはずです」
霊媒師さんは、そう言って、箱を引き取ってくれた。

その日以来、本当に怪現象はピタッとやんだ。
黒い小箱の持ち主は、両親に箱の写真を見せて判明した。父方の祖母が所持していた小物入れだという。
詳しいことは教えてもらえなかったけど、どうも父と母は、結婚に際して、父の家とかなり揉めたらしい。
そういえば、怪奇現象が起き始めたのは祖母が亡くなった頃だったような気がする。
祖母は、父と母を呪うほど恨んでいたのだとおもうと、やるせない気持ちになった。

こうして、我が家の問題は解決したけど、僕には、
霊媒師さんからの高額な除霊料の請求という別の恐ろしい問題がまっていた。

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