【怖い話】プロ怪談師

 

先日、プロの怪談師さんが語る怪談を聞く機会があった。
なんでもない心霊話も、プロの語り部の手にかかると、
身も凍るおそろしい話に聞こえた。
何度背筋に寒気が走ったかわからない。

イベント後、少しだけ個別にお話させていただくことができた。

「どうして怪談の語り部になろうと思ったのですか?」
僕はストレートな質問をしてみた。
怪談師さんはフフといたずらっぽく笑って口を開いた。
「自分のためですね」
「自分のため、ですか?」
予想外の回答だった。
「ええ。怪談を語るようになる前、私の人生は惨めなものでした。
お金や人間関係のトラブルが絶えずでして。
ある時、霊能者の方に視ていただいたのですが、
私は生まれつき、悪い霊障にかかりやすい体質なのだと言われました。
解消するには、人に怪談を聞かせるとよいとアドバイスされました。
そうすることで、私に取り憑いた悪い霊の呪いを人に転写することができると。
怪談師になってから、驚くくらいトラブルは減りました。
・・・みなさん気づいていないですが、
実は、怪談の語り部というのは、聞き手に呪いをかけているんですよ。
なので、怪談を語る人にはどうかお気をつけください」
そう言って、怪談師さんは、また、フフフといたずらっぽく笑った。
怪談師さんのリップサービスなのかもしれないとも思ったが、
背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。

『怪談の語り部というのは聞き手に呪いをかけているんですよ』
明日、会社の飲み会があるので、
そこで私は怪談を披露しようと思っている・・・。

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