中学のクラスメイトのOちゃんは、死にたがりだ。
なにかショックなことがあるたびに「死にたい、死にたい」ともらす。
はじめはみんな心配していたけど、Oちゃんが死ぬ気などないことがわかると、
相手しないようになった。
ある時、私は体育の授業でOちゃんと同じ班になった。
その日はバレーボールの授業だった。
Oちゃんが何度もミスをして試合は負けた。
授業が終わるとOちゃんは、「死にたい、死にたい」と繰り返した。
それを見ていたバスケ部の部長のTちゃんはイライラしたように言った。
「あんたさ、そんなに死にたいなら、死になよ」
さすがにOちゃんがかわいそうに思えたけど、心から同情する生徒は誰もいなかった。
それくらいOちゃんにはみんなイライラしていた。
Oちゃんは、反論することもなく、何かボソボソとつぶやきながら、
一人で体育館を後にした。
その翌日、誰も予想しなかったことが起きた。
・・・こんな唐突に死んでしまうなんて。
けど、死んだのはOちゃんではない。
Oちゃんに強く当たったTちゃんの方だった。
学校の階段で足を滑らせて首の骨を折ったのだ。
私は怖くなった。
なぜなら、私には聞こえていたからだ。
Tちゃんに「死になよ」と言われた時、
Oちゃんがつぶやいた言葉を。
「・・・あんたがね」
そう言った時、Oちゃんは唇の端を歪めて微かに笑っていたようにも見えた。
OちゃんがTちゃんを殺したのだろうか。
否定しきれない自分がいた。
「ねえ・・・」
考え事をしていたら、いつの間にかOちゃんがすぐ後ろに立っていた。
「・・・あなたも死にたい?」
Oちゃんは、そう私に言い残して、去っていった。
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