【怖い話】お墓でかくれんぼ

僕が小学校3年生の時のことだ。

お盆前の夏休み、学校の友達数人と遊んでいると、お寺の裏にあるお墓でかくれんぼをしようという話になった。
誰が言い出したのかは覚えていない。

お墓は山の斜面に沿って建てられていて、周囲は雑木林だったので、隠れる場所が多かった。

じゃんけんをして鬼を決めた。
鬼はYくんだった。
仲間内で一番おとなしい子だった。

僕はできるだけ遠くに行こうと思った。
墓地のてっぺんまで駆け上がり、目に留まったお墓の背後に隠れた。
数をかぞえるYくんの声がやんだ。
探しはじめたようだ。
ドキドキしながら、息を殺して、待った。

蝉の鳴き声がうるさかった。
何ヵ所も蚊に刺された。
どれだけ時間が経ったろう。
一向に鬼のYくんはあらわれなかった。
やはり隠れた場所がよかったのだと嬉しい反面、
見つけてもらえない不安も感じ始めていた。

だんだんと空が茜色に染まり始めた。
全然見つけてもらえないので、自分から見つかりに行くことにした。
坂道を下っていく。
墓地の入口に、みんな集まっていた。
Yくんの姿だけなかった。
みんなYくんが探しに来ないので自分から出てきたのだという。
鬼の役目を放棄して一人で帰ってしまったのかと、みんなYくんに怒っていた。
けど、事態は想像以上に深刻だった。
Yくんは、それきり行方不明になってしまったのだ。

何回も繰り返し色んな大人の人から事情を聞かれ、
「墓地でかくれんぼなど、罰当たりなことをするからだ」と責められた。

大規模な捜索が行われたけどYくんは今でも見つかっていない・・・。

先日、実に十数年ぶりに、かくれんぼをした墓地を訪れることになった。

一年前に結婚した妻の実家のお墓がそこのお寺にあったのだ。
妻には昔の話はしなかった。
僕の中で、いまだに整理がついていない出来事だからだ。

妻の実家のお墓は山の上の方だった。
線香と献花を手に、懐かしい坂道をあがる。
あの頃の記憶がいくつもフラッシュバックした。
その時、ふいに、誰かにズボンの裾をつかまれたような気がした。

「・・・みぃつけた」

振り返って目に飛び込んできたのは、あの頃のままのYくんだった。
Yくんは、笑っていた。
目と鼻と口から血を流しながら・・・。

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