【怖い話】常磐線の怖い話

 

数年前、常磐線の各駅停車に乗って柏市にある取引先から大手町の会社に戻っていた時のことだ。
時刻は昼過ぎだったので、電車は比較的空いていた。
部長への提出資料を頭の中で組み立てながら電車に揺られていると、ふと、息苦しさに襲われた。
見ると、車内に煙のようなガス状のものが蔓延していた。
火災かと慌てて周囲を確認した。
すると、驚いたことに、ガスは私の向かいに座っている60代くらいのスーツの男性の口から出ていた。
男性は上に向けて口を開けて眠っているようだ。
他の乗客は、ガスに気がついていないのか、無反応だった。
・・・わけがわからなかった。
緊急停止ボタンを押すべきか、迷った。
人体からこんな大量のガスが出るものなのだろうか。
エクトプラズムというのか、まるで、魂が口から出ているかのようだった・・・。
そうこうしているうちに、電車が綾瀬駅に到着してしまった。

ガスを口から出していた男性は、ガバッと起きると、電車を降りていった。

窓越しに見ると、ホームを歩く男性は自分が発するガスに包まれて、煙の中に立っているかのようになっていた。

電車は何事もなかったかのように走り出した。
いったい、あのガスは何だったのだろう。

しばらくして、綾瀬駅で人身事故発生の通知がスマホに飛んできたけど、怖くて調べたりはできなかった・・・。

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