【怖い話】上野公園の怖い話 #294

 

これは、私が上野公園で体験した怖い話です。

上野公園は東京都台東区にあり、園内には、
パンダのシャンシャンで有名な上野動物園や不忍池、美術館などがあります。

私は、会社に出社する前、上野公園でランニングするのが日課でした。
朝焼けが始まったばかりの薄暗い公園は、空気も澄んでいて、走るのに最適な環境で
した。

そんな、ある日のことです。
いつものようにイヤホンで音楽を聴きながら園内を走っていると、
奇妙な女性を目にしました。
年齢は40代くらいでしょうか。
太った体躯に、脂ぎった髪。
ヨレヨレの服。
何が奇妙かと言いますと、その女性は木の根元に何かを置くような仕草をした後で、
祈るように手を合わせ、また別の木に移動しては同じことを繰り返していました。
その行動自体が不可解でしたし、顔は見えませんでしたが、直感的に近寄りたくないなと思いました。
私はすこし大回りするように走って、できるだけ距離を開けて、女性の横を通り過ぎました。

女性の姿を見かけたのは、それ一度きりで、
すっかり忘れていたのですが、ある出来事がきっかけになって思い出すことになりました。

お花見の季節になると上野公園は連日宴会の人達でいっぱいになります。
私が勤める会社も毎年、上野公園でお花見をしていました。
花見当日、私は、仕事で少し遅れて、上野公園に到着しました。
花見客で混雑した園内を歩いていると、救急車のサイレンの音にハッとしました。
しばらくして、担架を運んだ救急隊員が慌ただしく走っていくのが見えました。
行く先を目で追うと、人垣ができていました。
人垣の中央で、人が倒れていて、救急隊員が呼びかけていました。
・・・私は息をのみました。
そこは、奇妙な女性が、何かを置いて手を合わせていた木の根元だったのです。
単なる偶然だとは思いつつ、少し気味が悪い感じがしました。

それから、桜の花が散って、しばらく経ったある日のことです。
いつものように、朝ランニングをしていると、一本の木が黄色いテープで囲われているのに気がつきました。
私は、時折見かける公園の管理をしている方に声をかけて、黄色いテープのワケをたずねました。
「昨日、枝が折れて女の子の頭に当たったんですよ。危ないんで、立ち入り禁止にしてます」と言われました。
なぜわざわざ尋ねたかといいますと、その木にも、奇妙な女性が手を合わせていたからです。

・・・考え過ぎかもしれませんが、私には、
女性が木の根元に何かを置いて手を合わせていたことと無関係とは思えませんでした。
あの奇妙な女性が、災いの種を蒔いていたのではないか、どうしてもそんな気がしてしまうのです。

今年も、もうすぐお花見の季節がやってきます。上野公園でお花見をされる方は、くれぐれも注意して欲しいと思います。

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