【怖い話】誰か呼んだ? #270
大学のサークル友達がアパートに遊びにきた時のことだ。
部屋に着いて、しばらくすると、友達がそわそわしながらベランダに続く窓のカーテンに何度も目をやった。
「どうした?」
「え・・・、いや、ベランダの人、全然中に入ってこないけど、何やってるの?」
「は?ベランダに人なんて誰もいないけど」
「え、でも、この部屋来る時、ベランダに立っている人見たけど。他にも誰か呼んでるんだと思ってた・・・」
カーテンを引いてベランダを友達に見せたけど、もちろん誰もいなかった。
見間違えではないか、何度そう聞いても、確かに僕の部屋のベランダに人が立っていたという。
2階建てアパートだし、両隣の部屋に電気がついてなかったので、間違いないと友達は言った。
僕を怖がらせようとして冗談で言っているのかとも思ったけど、そうではないらしい。
・・・友達が目撃したのは一体誰だったのか。
気味が悪くなってしまい、僕達は近くのファミレスに避難することにした。
アパートの階段を降りると、ベランダ側の窓が見える。
僕と友達は一斉に振り返ってベランダを見た。
ベランダには誰も立っていなかった。
ホッと安心した。
やはり見間違えだったのではないか、ちょっと疑いながら、友達の顔をうかがうと、友達は僕の部屋を凝視して固まっていた。
「どうした?」
「アレ・・・」
友達が指差した先を目で追って、僕はギョッとした。
目を凝らさないとわからないけど、
僕の部屋の中、カーテンの隙間から、男の人がこちらをじっと見ていた。
暗闇に潜むように、こちらを見つめる男の目には何の感情もなかった。
・・・そいつはいつのまにか部屋に入っていた。
僕と友達は恐る恐る部屋を確認しに戻ったけど、誰もいなかった。
・・・それからすぐに部屋を引っ越したのは言うまでもない。
カーテンを引くと見知らぬ人がベランダに立っているのではないか。
その怖さは今でも残っている。