東京タワーの怖い話 #251

 

これは、昔、東京タワーで働いていた知り合いのBさんから聞いた怖い話です。

実は東京タワーは増上寺というお寺のお墓があった場所の上に建てられているらしく、
そのため幽霊の目撃談が多いのだといいます。有名な話では、
非常階段を着物の女性が歩いているという怪談や鉄脚の下で遊ぶ女の子の幽霊の話があるそうです。

私の知り合いのBさんも、一度だけ恐ろしい体験をしたといいます。

Bさんは、当時、エレベーターのアテンダントをしていました。
東京タワーでは3機のエレベーターにそれぞれアテンダントがつき、
展望台までの約1分間にタワーの案内をしているのです。

その日は雨で、いつもに比べればお客さんの数は少ない方でした。
Bさんは、何度めかの上昇の際、「あれ?」と思いました。

お客さんの中に、髪を三編みにした5、6歳の女の子がいたのですが、
その女の子が妙に気になりました。
それには理由がありました。

ついさっきも上りのエレベーターにとても似た子が乗っていたのです。
その子も三編みで同じような格好をしていた覚えがありました。
姉妹なのかな・・・。
その時は、そう思っただけでした。

けど、それから30分もしないうちに、また同じ少女が上りエレベーターに乗り込んできたのです。
Bさんはギョッとしてしまいました。
お客さんに悟られないよう必死に笑顔を作りましたけど、
ひきつっているのが自分でもわかりました。
展望台から降りてまた昇る人はめったにいるものではありません。
しかも、その少女には連れ添っている保護者の姿が見当たらないのです。
おかしいのは明らかでした。

エレベーターが展望台に到着すると、お客さんが続々と降りていきました。
けど、一人だけ残っているお客さんがいました。
三編みの少女でした。
少女はじっとBさんを見上げていました。
もしかしたら迷子なのだろうか。
Bさんはそう思いました。
いや、そう思いたかったのかもしれません。

「お母さんとお父さんはどこにいるの?」
Bさんは少女に話しかけました。
すると、少女は首をふりました。
「じゃあ誰と一緒にきたのかな?」
また少女は首をふりました。
「ひとりできたの?どこからきたの?」
すると少女は小さく微笑んで言いました。
「・・・この下」
そして、エレベーターの床に沈むように消えていったといいます・・・。

お墓で眠っていた子が騒がしくて起きてしまったのではないか、
Bさんはそう思っているそうです。

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