【怖い話】八王子の黒い女 #250

 

これは僕が小学校5年生の時に体験した、本当にあった怖い話だ。

僕は当時、東京都八王子市のアパートに家族と住んでいて、
歩いて10分くらいの小学校に通っていた。

ある日の体育の授業のこと。
その日はバスケットボールの授業だった。
冬の体育館は、身体を動かしている間はいいものの、
他のチームのゲームを待つ間は寒くて最悪だった。
ライン際で体育座りをしてゲームを見学していると、奇妙な光景が目に止まった。
コートを挟んで向かいに座っている生徒の後ろに大人の女性が立っていたのだ。
全身黒い服を着ていて髪も黒いから、影絵のようだった。
学校では見かけたことがないから先生ではない。
女の人は座っている生徒の一人に何か耳打ちしているようだった。
誰かのお母さんかな?
その時は本気でそう思った。
授業が終わった後、友達にその女の人のことをたずねてみたけど、
友達からは「見てない」と言われた。

数日後。
同級生が登校中に交通事故にあったという知らせに教室が騒ぎになった。
僕は別の意味で驚いていた。
事故にあった生徒は、先日、体育館で全身黒ずくめの女の人に耳打ちされていた子だった。
単なる偶然なのだろうか?
なんだか気味の悪さを感じた。

それからしばらくして、僕はまた黒い女を目撃した。
今度は学校の廊下を歩いている時。
とある女子生徒の後ろにぴったりとくっついて体育館で見た女の人が歩いていた。
そして、歩きながら何か耳打ちしていた。
ゾゾッと寒気を感じた。
周りの生徒達は、その異様な光景がまるで目に入っていないようだった。
僕しか気がついていないのだろうか?

その数日後、黒い女に耳打ちされていた女子生徒は学校の屋上から飛び降りた。
幸い女子生徒は重傷を負ったけれど命は取りとめた。
黒い女に何かを囁かれたせいで、おかしな行動を取ったのではかいか。
考えれば考えるほど、そんな気がしてきた。
だけど、僕以外に黒い女を目撃している人は今回もいなかった。

次に黒い女が現れたのは、テスト中の教室だった。
教員用のデスクの横に立ち、担任の先生に何かをささやいていた。
おかげでテストどころじゃなかった。
先生は明らかに黒い女に気がついていない。
やはり僕にしか見えていないのだ。
先生に何か警告するべきではないか。
僕は迷った。
でも、どうやって?
考えているうちにチャイムが鳴ってしまった。
黒い女は担任の先生と一緒に教室を出ていった。

担任の先生が生徒に手を上げ警察に逮捕されたのは、その数日後。
みんな先生を責めた。
だけど、僕にはわかっていた。
先生のせいなんかじゃない。
黒い女に囁かれたせいだ。
黒い女に囁かれると、みんな異常な行動を取る。
多分、間違いない。
けど、あの黒い女は一体なんなのか?
正体はわからないし、僕には何もできない。

そんなある日、恐れていたことが起きた。
帰ろうと思って昇降口で靴を履きかえていたいた時だった。
背後に気配を感じた。
次の瞬間、耳元で誰かの息づかいがした。
・・・黒い女だ!
僕は咄嗟に耳を塞いだ。
けど、指の隙間から、意味をなさないごにょごにょとした呪文のような声が、
微かに入り込んできた。
やめて!やめて!
僕は心の中で叫びながら、耳を塞いだ。
どれくらい経っただろう。
いつの間にか声も気配も止んでいた。
目を開けて後ろを見ると、誰もいなかった。

それからしばらく僕は色々な理由をつけて学校を休んだ。
いじめられているのではと両親を心配させてしまったのは今でも悔やんでいるけど、
そうするより仕方なかった。
自分がどんな異常な行動をするのかわからないのが怖かった。
2週間経っても何も自分の身に起きなかったので、
ようやく安心して、学校に通い始めた。

それ以来、黒い女を見かけることはなかった。
あの時、咄嗟に耳を塞いだおかげで、僕は助かったのかもしれない。
耳を塞がなければ何が起きていたのかと思うと、今でも怖い。
僕が通っていた小学校では、今も問題が多いと聞く。
まだ、あの黒い女は学校のどこかにいるのかもしれない・・・。

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