鍾乳洞の怖い話 #245

これは小学校の遠足で鍾乳洞を見学した時に体験した怖い話です。

はじめて入る鍾乳洞は幻想的でとてもキレイだったのを今でも鮮明に覚えています。
ライトアップされたつららのような石や、石柱郡。
途中にある水溜まりは、透き通っていてとても冷たくてきれいでした。
頭を下げないと通れないトンネルはハラハラしました。

途中、ロープで立ち入り禁止になっている場所がありました。
その先にも鍾乳洞は続いていました。
私の近くにいた引率の先生が言いました。
「危ないからロープの向こうにはいかないでね」
「何でいったらダメなんですか?」
「崩れやすかったり、滑りやすかったりして危ないの」
「でも・・・」
と言って私は言葉を飲み込んだ。
だったら、奥からこちらを覗いている男の子はいいの?と思ったのです。
男の子は、奥の石柱の陰からこちらを見て手招きしていました。
だけど、行ったらいけないような気がしました。
先生にダメって言われたというより本能的な恐怖だったような気がします。
それに、あんな子、私の同級生にはいなかったのです。
「なに、あいつ?」
私の隣に来たクラスメイトのAくんが言うや、Aくんはためらいなくロープをくぐっていきました。
「ちょっと・・・だめだよ!」
私が止めるのも聞かずAくんは奥に進んでいきました。
「私、知らないから!」
共犯にされるのが嫌で私は先を急ぎました。
それからも、洞窟内を流れ落ちる滝などみどころはいっぱいあったのですが、
Aくんと見知らぬ男の子のことが気になって楽しめませんでした。

鍾乳洞から出ると、日光の眩しさに目が痛くなりました。
出口前には、私より先に出ていた同級生が何人かいました。
あれ?と思いました。
その中にAくんの姿があったのです。
一本道だったのに、いつの間に抜かされていたのでしょうか。
あの立ち入り禁止の道は出口までの近道だったのかな、そう思いました。
「ねえ、Aくん」
振り返ったAくんはニコッと笑いました。
「なんだい?」
ゾワッとしました。
・・・目の前にいるのはAくんではありませんでした。
見た目はAくんでしたけど、絶対別人でした。
なのに、みんな普通にAくんとして接していました。
わけがわかりませんでした。

みんなが出てくると、整列して先生が点呼を取りました。
全員揃っているので、バスに乗り込み始めました。
Aくんが、クラスメイトと楽しそうにバスに乗り込むのが見えました。
・・・どうして誰も気がつかないのだろう。
あれはAくんじゃないのに。
どうして私にだけわかるのか、わかりませんでした。
私は鍾乳洞を振り返りました。
本当のAくんは、きっと、まだあの中に取り残されているのです。
けど、私に、それを証明する方法はありませんでした。

偽のAくんは何食わぬ顔でそれからもAくんになりすましました。
Aくんの家族も誰も気がつかないまま。
私は関わらないようにしていましたが、大人になった今でもAくんの偽物は近所に住んでいます。
地元で不審な事件が起きると、何らかの形でAくんの影があるのは偶然なのでしょうか。
Aくんの家の近くで起きた殺人事件、Aくんが通っていた高校で起きた連続自殺、
Aくんが勤めている会社の社長の謎の失踪。
それら全ての事件に、Aくんになりすましている何かが関わっている気がしてならないのです。
一方、例の鍾乳洞は、怪奇現象が起きると若い子達の間で有名なようです。
鍾乳洞の中で写真を撮ると、小学生くらいの男の子が映り込むのだといいます。
一度、鍾乳洞で撮ったという心霊写真を見せてもらいましたが、当時のAくんにとても似ていました。
本物のAくんはいまでも鍾乳洞から帰れず助けを求めているのかもしれません。

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