食べても食べても太らない人 #234

2017/11/12

 

食べても食べても太らない人が、あなたの周りにはいないだろうか?
脂肪の燃焼がすごいとか、エネルギー効率がいいとか言われているけど、中には体質が理由じゃない人もいる・・・。

私の大学の同級生のSちゃんがまさにそうだった。
1回に数千カロリーもの料理を余裕で平らげる。
しかも、高カロリーの肉やあぶらものが大好き。
なのに、針金みたいに痩せていた。
食べるたびに戻しているのではないかと、はじめは思っていた。
気になって1日Sちゃんに張りついてみたりしたけど戻している様子はなかった。
食べ終わった後のお腹を見せてもらっても、まるで膨らんでいない。
摩訶不思議としかいいようがなかった。
こういう人もいるんだ、と思うしかなかった。
羨ましいような少し怖いような、そんな感覚だった。

ある日、Sちゃんが気分が悪いと言って、授業を抜けた。
食べ過ぎの影響がついに出たのではと思った。
Sちゃんは、いくら時間が経っても一向に教室に戻ってこなかった。
さすがに心配になって私は女子トイレに様子を見に行った。
するとSちゃんがトイレの床に倒れていた。
慌てて医務室の人を呼びに行こうとした時、私は奇妙なモノに目がとまった。
Sちゃんの口からなにかが出ていた。
ピンク色をしていて脳ミソみたいにたくさんの皺がある肉の塊。
一見、臓器のようなそれはまばらに毛が生えていて、
Sちゃんの口から出たヘソの緒のようなもので繋がっていた。
なんなの、これ・・・。
そう思って固まっていると、いきなり、肉の塊がビクビクと動き始めた。
私は叫びだしそうになった。
向きを変えた肉の塊に人間の目玉のようなものがついていたのだ。
肉の塊は、私と目が合うと、逃げるようにSちゃんの口の中に戻っていった。
すると、Sちゃんは何事もなかったかのように意識を取り戻し、起き上がった。
ケロッとした様子で「よくあるから心配しないで」と笑った。
その日のランチ。
Sちゃんは、しょうが焼き定食を3人前ペロリと平らげた。
・・・どうしてSちゃんが太らないのかわかった気がした。
食べたものはSちゃんの中にいる何だかわからない肉の塊のエネルギーとなっているからだ。
それにしても、さっき見た肉の塊は何だったのだろう。
寄生虫?エイリアン?
なんだっていい。
とにかくSちゃんは普通じゃない。
もう関わるのはやめよう。
そんなことを考えていると、デザートのケーキ5個を食べ終えたSちゃんが私の方を見て笑って言った。
「あーお腹減った。○○ちゃんでも、食べちゃおうかな」

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