宮ヶ瀬ダムの虹の大橋 #230

2017/11/08

 

先日、男友達4人で釣りに行った帰りに体験した怖い話です。

その日、僕たちは、山梨県の渓流で釣りを楽しみ、温泉に立ち寄ったり、観光をしながらゆっくり帰っていました。
東京方面の帰りの高速道路に乗った時には、夜の11時をすぎていたと思います。
帰りの運転は僕がやることになりました。

僕たちは4人とも神奈川県平塚市に住んでいます。
帰りは中央自動車道で八王子から圏央道に入ればスムーズなのですが、その日は運悪く大月を過ぎたあたりで事故渋滞が起きていたので、仕方なく大月インターで降りて下の道で帰ることにしました。

ナビの指示通りに走るとうねうねとした峠道に入っていきました。
対向車線も少なく寂しい道が続きました。
みんなくたくたに疲れていたので口数も減っていき、気がつくと他の3人は眠っていました。
やがて厚木・伊勢原方面という看板が出てきたので右折して64号線に入り、
車一台分くらいの細い山道を上っていきました。
だんだん霧も出てきたので、大通りを行けばよかったかなと後悔し始めた時、視界が開けました。
だだっぴろい真っ暗闇にかかる橋。
橋には、「虹の大橋」と銘が書かれていました。
しまった!と内心思いました。
虹の大橋は宮ヶ瀬ダムにかかる橋で、自殺の名所として有名な心霊スポットなのです。
橋の両サイドに自殺防止用の大きな柵があるくらいの場所で、こんな夜中に通るなんて馬鹿としか言えませんでした。
知っていれば避けたのに、ナビの言う通りに走ってしまったのがアダとなりました。
他の3人はそんな恐ろしい場所に差し掛かったこともつゆ知らず眠っていました。
3人を起こしたい欲求にかられましたが、それよりも早く橋を渡って宮ヶ瀬を抜けようと思いました。
僕はアクセルを踏み込み橋に入っていきました。他に車はありませんでした。
うっすらとかかった霧の中から突然何かが飛び出てくるのではないか、そんな想像が頭から離れませんでした。
橋の中腹ほどまで来た時でした。
車のライトに柵の傍に立つ女性の姿が浮かびました。
まさか!自殺者?
思わずブレーキをかけそうになりましたが、直感的に関わらないほうがいい気がして、徐行で女性の横を抜けました。
横目でちらと見ると、女性はこちらに背中を向けて柵の方を向いてじっと立っていました。
冬だというのにTシャツを着ていて、見るからに変でした。
女性の横を通り過ぎてから、やはり無視するのは少し気が引けて、バックミラーを覗くと、女性の姿は一瞬でどこかに消えていました。
・・・出た!
背筋に冷たい汗が流れ、鳥肌がブワッと立ちました。
早くここから離れないと!
僕は反射的にアクセルを踏み込みました。
一気に橋を渡りきると車を止め、バックミラーを見ました。
霧が橋をすっかり隠してしまっていてうかがうことはできませんでしたが、
幽霊を見た恐怖と興奮で震えが止まりませんでした。
さすがに他の3人を起こそうとした時、寝ていた3人の口からもごもごと声が聞こえました。
「・・・死にたくない、死にたくない、死にたくない」
まるで合唱のように3人の声は揃っていました。
僕は3人を叩き起こしました。
イライラしたように起きた3人は、もとの3人に戻っていました 。

そんなことがあって二度と宮ヶ瀬には行くまいと思っていたのですが、つい先日、
親戚の法事に行った帰り、何を思ったのか運転していた父親が虹の大橋に続く道に入っていったのです。
別の道にしてくれと頼みすぐに引き返したのですが、父親が言うには、通るつもりなんてなかったのに、
なんでその道を通ろうと思ったのかわからないそうです。

虹の大橋はもしかしたら引かれてしまう場所なのかもしれません。
あまり興味本位で近づくのはオススメしません。

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