ハロウィンパーティー #221

 

仮装した子供達がはしゃいでおいかけっこをしていた。
誰が一番怖いか競っている子達もいた。
私の息子は、すみの方でもじもじとしていて、助けを求めるように、時々私の方を見ている。
助けるのは簡単だし、一人ぼっちでいるさびしさを思うと胸が痛い。
けど、親が口を出すのは彼のためにならないと、ぐっとこらえた。
すると、救援が来ないことを悟った息子は、勇気を振り絞って近くの子に話しかけた。
そう、その調子。これから先、もっと大変なことばかりなんだから、がんばって。
心の中で応援する。

今日は幼稚園の同級生の家にお招きされて、ハロウィンパーティーだった。
ホラーメイクと仮装した子供達が集まってお菓子を食べるだけなのだが、なかなかの盛り上がりだった。
それにしても、と思う。
まるでパーティー会場のような広さのリビングを見回した。
幼稚園の教室より広いのではないか。
噂には聞いていた。
主催者のママス友は地主の一人娘。
ありあまる資産を投資でさらに増やしているという噂だ。
うらやましいとは思う、けど、ここまで圧倒的な差があると世界が違うという感覚に近い。
娘さんは、魔女の仮装なのだろうけど、お姫様みたいにしか見えないドレスを着て、子供達の中心にいた。
彼女を取り囲む子達も育ちの良さがにじみでている。
私の息子があのお姫様達と仲良くなることはないだろうな、と思った。
このハロウィンパーティーも子供達の交流が目的ではない。
しもじもを統率するリーダーシップをアピールする大切な場なのだ。
そう考えるのは穿ちすぎか。
こんなところでも社会の縮図を見た気がして気分が悪くなってきたので、お手洗いに立つことにした。
廊下に出ると、女の子がポツンと立っていた。
赤いフードを頭からスッポリ被っている。
赤ずきんちゃんの仮装だろうか?
こんな子いたかな?
不思議に思いつつ、声をかけた。
「どうしたの?みんなと遊ばないの?お菓子もいっぱいあるよ?」
「お菓子いらない・・・」
その子は俯いたままボソボソと答えた。
なんだか暗い感じの子で、心配に思うと同時に不安な気持ちにさせられた。
子供らしい無邪気さをまるで感じなかった。
「デザートもあるよ、アイスとか、フルーツとか」
私は努めて明るく言った。
すると、女の子はパーティー会場に向けて、指を差した。
「・・・あの子が欲しい」
指の先を追うと私の息子だった。
「一緒に遊びたいの?」
「・・・あの子が欲しい」
「欲しいってどういうことかな?」
「・・・あの子が欲しい」
それしか言わない。
だんだん気味が悪くなってきた。
何かこの子変だ。
「あの子はあげられないの、あっちの子にして」
私はお姫様のような主催者の娘を指差していった。
なんで、そんな風に言ったのか、今ではわからない。
自分の息子に気味が悪い子の注意が向いているのが嫌だったのかもしれない。
「あの子ならいい?」
「いいわよ」
すると、女の子は、ニィッと笑った気がした。
私は、早くその場を離れたくてお手洗いに行った。
戻ってきた時には、赤いフードを被った女の子はいなくなっていた。
パーティー会場にも、その子の姿はなかった・・・。

お姫様のようだったあの子が、階段から足を踏み外して亡くなったのは、ハロウィンパーティーから2週間後のことだった。
私が会った赤いフードの女の子が関係しているのかはわからない。
ただ、あの時、赤いフードの女の子の興味を息子に向けたままにしなくてよかったとは、今でも思っている。

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