保険外交員が体験した怖い話 #215

 

ある保険の外交員の女性が一軒の家に飛び込みで営業をかけた。
その家の奥さんは40代くらいの感じのいい人で、丁寧に応対してくれた。
リビングでお茶菓子をいただきながら、保険の説明をしていると、2階から何やら大きな音が聞こえた。
「息子なんです。学校にも行かず、引きこもってしまっていて」
奥さんは悲しそうに言った。
「お気持ちお察しいたします。実は、私、心理カウンセラーの資格を持っているんですよ。よろしければ、お会いしてカウンセリングしてさしあげましょうか」
1件でも多くの契約を取るため、外交員の女性は話のタネとして役に立ちそうな資格を30以上持っていた。
「でも、無料でやっていただくのは悪いわ」
「いえいえ、これもご縁ですから」
「じゃあ、お願いしようかしら」
外交員の女性は、奥さんに案内されて階段をあがっていた。
2階に上がり息子さんの部屋のドアの前に立つと、部屋の中から、大声がした。
「その女は母親じゃない!」
外交員の女性が振り返ると、奥さんが包丁を手に笑っていた。

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