【怖い話】【心霊】第179話「夏祭りの怖い話」

2017/10/16

 

私が住むA市の神社では毎年夏祭りが行われます。
神社までの通りが歩行者天国になり、多くの屋台が並ぶので、市外からも大勢の
人がくる夏のビッグイベントでした。
高校最後の夏、私は友達と浴衣を着て夏祭りに参加することにしました。
「彼氏できないねー」などと話しながら、心のどこかでは、いい出会いがもしかしたらあるかもしれないと微かな期待もありました。
ところが、そんな期待もむなしく、身動きできないほどの人ごみにもまれ、お酒臭いおじさんがたくさんいたり、浴衣の帯がほどけそうになったり、散々でした。
人ごみをとにかく抜けようとしたら、神社の裏手に出ていました。
気がつくと一緒にいた友達の姿がありません。はぐれてしまいました。
神社の裏はお祭りの喧騒とは無縁でした。
ひとけがなくお祭りの提灯の灯りもないので真っ暗でした。
座るのに手頃な大きな石があり、私は腰かけて友達に「神社の裏」とLINEを送りました。
しばらく待っていると、人がやってきました。
暗いのでシルエットしか見えません。
ですが、なんとなく友達のように見えました。
私は腰かけていた石から立ち上がり、呼びかけようとして、ハッとしました。
シルエットが奇妙な動きをしていたのです。
踊るようにユラユラ揺れています。
友達の名前を呼びかけましたが、反応はありません。
鳥肌が立つのがわかりました。
背筋に冷たい汗が流れるのを感じました。
・・・・なにあれ?
次の瞬間、ゆっくり揺れていたシルエットが急に私の方に飛びかかってきました。
叫び声をあげる前に私は黒い塊に飲み込まれました。
それは友達などではありませんでした。
一瞬見えたのは、真っ黒い顔に血走った目がついた化け物でした・・・。

名前を呼ぶ声に目を覚ましました。
全身が痛みました。
私は神社の裏の砂利の上に倒れて気を失っていたようでした。
目の前に心配そうにする友達の顔がありました。
「目、覚めた?大丈夫!?」
友達はLINEを読んで神社の裏に来たところ倒れている私を発見したといいます。
「何があったの?」
私はさっきの怖い体験を友達に話しました。
けど、話しているうちに、アレは本当にあった出来事だったのか自信がなくなってきました。
「・・・けど、私の見間違いかも」
すると、友達は言いました。
「そんなことないよ。だって、ここにいるじゃない・・・」
友達は変顔をして見せてきました。
思わず私は吹き出してしまいました。
「笑わせないでよ!」
「だってユーレイ見たんでしょ」
私たちは笑いあいながらお祭りに戻りました。
すると、境内で騒ぎが起きていました。
表に停められた救急車から担架を降ろした救急隊員が、法被を着たお祭り関係者に先導され神社の裏に駆けていくのが見えました。
「なにかあったのかな」
「さあ、事故かな」
やがて担架が戻ってきました。
私くらいの年齢の女の子が乗っていました。
・・・いえ、それは私自身でした。
青紫の顔をした私自身が担架で運ばれていくのを私は見ていました。
「・・・なに、あれ」
「バチがあたったんだよ」
友達が私の耳元で囁きました。
「バチ?何言ってるの?今見たでしょ?私が運ばれてくの」
「行こ」
友達は私の手を取って引っ張っていきました。友達は笑っていました。
アハハハアハハハ
・・・ついていくのは嫌でした。けど、すごい力でつかまれて、手を振り払うことができません。
友達は私を暗い方暗い方へ連れていきます。
アハハハアハハハ
友達はいつまでも笑い続けていました。

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