【怖い話】【心霊】第177話「雑居ビルのトイレ」

2017/10/16

 

友達と飲んだ帰り、駅に向かう途中で、急にトイレにいきたくなった。
タイミング悪く、コンビニが近くになかった。
けど、どうしても我慢できなくなって、 近くの飲食店に駆け込んだ。
店員さんにトイレを貸して欲しいと告げると、お店が入っているビルと共用なのだと教えられた。
教えてもらったとおり一度店の外に出て、すぐ横の階段を上がった。
二階に上がると細い廊下が伸びていた。
この奥にトイレがあるらしいのだが、二階のオフィスはすでに人がいないらしく、廊下は真っ暗だった。
しかも、古いビルなのでカビのような独特な臭いがした。
壁に手を這わせ電気のスイッチを探したけど見当たらない。
仕方なく暗い廊下を進んだ。
カツン、カツンと自分の足音だけが廊下に響く。壁に反響して耳の後ろから聞こえるので誰かにつけられているんじゃないかと錯覚しそうになる。
ようやく突き当たりまで来ると、男性用、女性用のトイレがひとつずつあった。
男性用トイレに入る。さすがにトイレの電気はついた。
用を足してようやく人心地ついた。それにしても肝が冷えるトイレだ。夜だからというのもあるけれど、お化け屋敷顔負けの雰囲気が出ている。
その時だった。
カツン、カツン。
廊下を歩く足音が聞こえた。
足音はこちらに向かっていた。
別のトイレの利用者だろう。
足音はトイレの前で止まった。
隣の女性用に入った気配はない。
コンコンとノックの音がしたので、中からノックを返した。
待たせるのも悪いので急いで水を流して、トイレから出た。
・・・けど、トイレの前には誰もいなかった。隣の女性用も使われていない。さっきのノックの主はどこへ消えたのか。トイレは廊下の突き当たりだ。隠れる場所はどこにもない。
僕は怖くなって、廊下を走って戻った。
階段までもう少しのところで一度だけ振り返った。
真っ暗な廊下の奥、トイレの明かりが見えた。慌てていて電気を消すのを忘れてしまった。
その時。
キィィィときしんだ音が聞こえた。
誰もいないのに、男性用トイレのドアがひとりでにしまっていくのが見えた。
背筋がゾーッとした。
階段を転げるように降りた。
下で待たせていた友人は不思議そうな顔で僕を出迎えた。
僕の後に誰か階段を上がってトイレに向かったか尋ねると、「誰も」と友人は言った。

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