【怖い話】【心霊】第174話「だーれだ」

2017/09/11

 

「だーれだ!」
後ろから声がして、手で目を隠された。
「A」
パッと手が離れる。振り返ると、彼女のAがいたずらっぽく笑っている。
付き合って2年。Aはときおりこうやってふざけるのが好きだ。
今日は二人でドライブデート。峠道の休憩所でタバコを吸っているところだった。
「あ、飲み物買ってくるね」
「じゃあもう一本吸ってる」
Aは自動販売機の方へパタパタと走っていった。
タバコを半ばまで吸い終わった頃、また手で目を隠された。
またかと心で苦笑しながら、今度はこちらが驚かせてやろうとイタズラ心が湧き、急に振り返ってみた。
けど、後ろには、誰もいなかった・・・。
辺りを見回してもAどころか誰の姿もなかった。
「だーれだ」
1テンポ遅れて声がした。誰もいない空間から、男とも女ともわからない声が。
僕は逃げるように駐車していた車に走った。
ちょうどAが炭酸飲料を飲みながら自動販売機から戻ってくるところだった。
「どうしたの?」
「乗って!すぐ出るから」
不思議そうなAを無理やり助手席に乗せ、僕は車を急発進させた。バックミラーに怪しいものは映っていなかった。
「何かあったの?」
「でたんだよ」
「何が?」
「幽霊」
「・・・えぇ?」
僕が説明を始めようとした瞬間、後部座席から手が伸びてきて、目を塞がれた。

だぁーーれだ・・・。

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