【怖い話】【心霊】第159話「シャッター通り商店街の怪」

 

私が住んでいる団地の近くに古い商店街があります。営業しているお店はわずか数店舗、ほとんどがシャッターを降ろしている、いわゆるシャッター通り商店街です。
ある日、ママ友とお茶をして、帰りにその商店街を通った時のことでした。
私以外に誰も商店街にいませんでした。
お客がいないので、開いているお店もほったらかしで、店の人の影もありません。
なんだか物悲しい気持ちになりました。
早く通り抜けよう、そう思って少し歩くスピードを上げた時、人の声が聞こえました。
シャッターが降りたお店の中からでした。
「○○文具」という看板が見えました。
もとは文房具屋さんだったようです。
会話の内容は聞き取れませんでしたが、複数人で何か相談話をしているような、そんな雰囲気でした。
「お店は閉めてもまだ住んでいるんだなぁ」と思い、その日は何事もなく帰りました。
夜。帰宅した主人にそのことを話すと、「ありえない」と言われました。
主人は地元の人間なので、商店街の人達にも顔見知りが多かったのです。
主人によれば、私が声を聞いた文房具屋さんのご夫婦は数年前に亡くなっていて、跡取りもなく、かといって売り手もおらず手つかずの状態になっているのだそうです。
「聞き間違いだろ」主人はそう言って鼻で笑いました。馬鹿にされ、私はムッとしました。
しばらくして。子供が熱を出したのですが、タイミング悪く薬がきれていたので、夜も営業しているドラッグストアに買い出しにいくことにしました。急がないとと思っていたら、無意識に例の商店街に出ていました。ドラッグストアへの一番の近道なのです。
こんな夜に通りたくありませんでしたが、子供のためと思って小走りに進みました。
意識を逸らそうと思っても、前を通るとき、つい文房具屋さんに注意がいってしまいました。
・・・声が聞こえました。
シャッターの向こうで何人もの人達が話しています。
やはり私の聞き間違いなんかじゃない。馬鹿にした主人の表情を思い出し、電話して文句を言ってやろうと思いました。
・・・けど、その時、気づいたのです。
その文房具屋さんだけではなかったのです。
周りのシャッターが降りたお店からも話し声がしていました。

ヒソヒソ、ヒソヒソ、ヒソヒソ。

秘密を相談するような囁き声で、ときおりヒヒッという笑い声も聞こえました。
何なのこの声・・・。
怖くなって一歩後ろに下がると、誰かにぶつかりました。
おばあさんでした。
足音にも気づきませんでした。
びっくりしてしまい何の反応もできずにいると、「住みすいんだねえ」とおばあさんがつぶやきました。
私に向かって言ったというよりは独り言のようでした。
そして、おばあさんはお店の方に向かって歩き出し、そのままシャッターの向こうにスーッと消えていきました。

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