【怖い話】【サスペンス】第149話「20歳の真実」

 

僕は20歳の誕生日を迎えた。
実業家の父と、元モデルの母、少しワガママな妹との4人暮らし。
愛情にもお金にも困ることなく、何不自由なく育ってこれた幸せ。
僕は本当に恵まれていると感じた誕生日だった。

けど、翌日、全てが一変した。
20歳になって飲んだお酒のせいで、人生初の2日酔いになり、
起きたのは昼過ぎだった。
頭がガンガンする。
キッチンへ降りていくと、コップやお皿などが全てなくなっていた。
冷蔵庫を開けると何も入っていない。
水も食料も何もかもなくなっていた。
・・・おかしい。こんなわけないのに。
それに、今日は祝日だというのに静かすぎる。
みんな一体どこへいるのか。
妹の部屋に行った。
部屋はもぬけの殻だった。
昨日までの生活感が嘘のように、ベッドも服も何もかもなくなっていた。
父と母の寝室も同じだった。
・・・みんな消えてしまった。
混乱と頭痛で僕はリビングのソファから動けなくなった。
・・・いつの間にか目の前に人が立っていた。父の弁護士だった。
「君に伝えなければいけないことがある」
弁護士の先生が語ったのは僕の人生を根底から覆す事実だった。
僕の本当の両親は僕が1歳の時に事故で亡くなっていた。
生前、両親は自分達に万が一のことが起きた時に僕が天涯孤独とならないよう遺言状を作成していた。資産家だった父は親戚を信用していなかった。選んだのはレンタル家族だった。
僕が20歳になるまでの契約で。
当事、父はお金で親戚と揉めていたので、こんな遺言を作成したのだろうと弁護士の先生は言った。実際に遺言が実行されるとは、父本人も思っていなかったのではないか、と。
・・・僕が20歳まで家族だと思っていた人達を僕の本当の家族じゃなかった。
「・・・もし、君が望むのなら契約を延長することもできる」
弁護士の先生はそう言った。

「お兄ちゃーん」
妹が手を振って駆けてくる。
車から降りた両親は満面の笑顔を浮かべている。みんな何事もなかったような顔をしている。
僕の選択が正しかったのかは、今はまだわからない・・・。

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