【怖い話】【心霊】第138話「しらないおじさん」

私が小学校5年生の時の話。
妹は幼稚園の年長組で、もうすぐ小学校に上がるという時期だった。
夕飯を私と妹と両親で食べていたら、母が「知らないおじさんについていったらダメよ」と妹に言った。母としては小学校の登下校を心配して言ったのだろうが、妹はおかしなことをいい始めた。
「この前、お母さんの部屋でしらないおじさん見たよ」
夕飯の席が凍りついたのは言うまでもない。当時、小学生だった私にも、母が父と違う男の人と不倫していたのではないかと十分推測できた。
「なに言ってるの」
母は笑って誤魔化していたけど、両親の仲はそれからぎくしゃくし始め、二人は離婚した。きっかけは妹の言葉だったと思う。

最近、大人になった私は、あらためて母に真相を聞いてみた。すると、母は不倫なんか絶対していないと言った。いまさら嘘をつく必要などないから本当なのだろう。当時も母は誓って裏切ってないと父に訴えたそうだが父はかたくなに母を信じなかったのだという。
だとすると、妹が母の部屋で見たという、しらないおじさんは何者だったのか。
妹に聞いてみたら、夕飯の席で自分がしゃべったことを覚えていなかった。
けど、小さい頃、首のない人とか色々おかしなモノみてた気がするんだよね、と妹はいった。
今まで知らなかったが、妹は霊感体質だったのだろうか。
妹が幽霊を見たせいで両親が離婚に至ったのだとしたら、こんな皮肉な話があるだろうか。両親の離婚がその後の私の人生にどれほど影響を与えたかを考えると、笑うしかなかった。
妹は自分の言葉がきっかけで両親が離婚したとは、いまだに気づいていない・・・。

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