第98話「はつもうで」

今年は久しぶりに友達数人と初詣に行くことになった。
三が日。近所の神社は人で溢れていて、参拝口から賽銭箱まで行くのに15分以上もかかった。賽銭箱までたどり着いたのはいいものの、あっちこっちから賽銭が飛んでくるものだから、10円玉が顔に当たったりした。

その帰り道のことだった。急に身体の不調を感じた。だるくて、悪寒がする。汗が噴き出す。骨や関節が痛む。年末の慌ただしさと珍しい外出がたたったのだろうか。
それだけで済まなかった。体調不良を理由に友人達と別れた後、家まで一人で歩いていた時のことだ。向こうから走ってきた車が突然、歩道に乗り上げ僕の方に突っ込んできた。慌てて身を翻したおかげで惨事はまぬがれたが、あと一歩で大怪我をするところだった。

年始からこれでは今年は先が思いやられる・・・。そんなことを考えて憂鬱になりながらやっと自宅にたどり着いた。一息ついて、服を脱ぐと、着ていたパーカーのフードから何かが落ちた。
厄払いのお守り・・・。
汚れ具合からして去年のお守りだろう。
誰かが神社に納めにきたお守りが何かの間違いで僕のフードに入り込んでしまったのだろう。
改めて神社を訪れお守りを納めると、嘘のように僕の体調不良は治った。
僕は「厄払い」のお守りを買って帰ることにした。

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