第95話「TV電話」

これは、私が大学生の時、遠方に住む男友達とTV電話をしていて体験した怖い話です。

その友達・Sくんとは高校の同級生で、お互い異性として意識することもなく、仲よくしていました。
電話をして、しばらくは特に何もありませんでした。
お互いの近況を話して30分くらいしたでしょうか。
その時、おかしなことがおきたのです。
TV電話ですから、画面にはSくんの顔が映っていて、その背後に部屋の様子も映り込んでいたのですが、閉まっていた物置の戸が一人でに開き始めたのです。
「ちょっと・・・Sくん、うしろ・・・」
「・・・うしろ?」
「誰かいる?物置開いたよ」
「は?え?誰もいないけど。やめろよ、夏だからって怖がらせんの」
Sくんは始め冗談だと思ったようでした。
「いや、本当に物置が勝手に開いたって」
私は言いました。
「ありえないだろ」
Sくんは、立って確かめに行きました。開いた物置の暗がりに首だけを入れて中の様子を見ているのがわかりました。
「・・・別に何もいないけど」
「でも、確かに開いたんだよ」
その時でした。
物置の中からニュッと2本の腕が出てきて、Sくんに抱きつくようにして、物置の中に引きずり込んだのです。
Sくんは「わっ」と小さく驚いた声を出しただけで、一瞬にしてSくんの身体は見えなくなりました。
私は、何も反応できず固まってしまいました。
画面には、ぽっかりと暗い穴を開けた物置が映っているだけでした。
「・・・Sくん?ねえ、Sくん!?」
何度呼びかけてもSくんの返答はありませんでした。
画面の前で、呆然とするしかありませんでした。
その時、物置の暗闇の中から、再び手が現れました。
物置の戸をなでるように、ソーッと腕が伸びてきたのです。
・・・まるで何かが物置の中から出てこようとしているようでした。
ダメ!これ以上見ては!
私は心の警告に従い、とっさにTV電話を切っていました。
呼吸を落ち着けてから、TV電話ではなく、普通にSくんに電話をかけてみましたが繋がることはありませんでした。
それ以来、Sくんの行方はわかっていません・・・。

しかも、それで話は終わりじゃないのです。
あれから2年。最近、Sくんの番号から頻繁にTV電話がかかってくるようになりました。取るべきなのか、取らない方がいいのか、私は迷っています。みなさんはどう思いますか。

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