第91話「サンタクロース」
2017/12/05
今日はクリスマスイブです。
ケーキやプレゼントが待ち遠しくて、僕はウキウキとして幼稚園から帰ってきました。送り迎えのバスを降りて家の中に入ると、いつもより元気いっぱいに「ただいま」と言いました。
帽子やカバンをリビングのソファに置くと、飼っている金魚の様子を見に行きました。餌をパラパラばらまいてやると、口をパクパクさせて次々に餌を食べて行きます。その様子がかわいくて、餌をあげすぎないようにお父さんから注意されても、ついついやってしまうのです。
その時でした。
僕は、目撃したのです。
2階に続く階段からサンタクロースが降りてくるのを。
僕は驚いて固まってしまいました。
・・・でも、確かにサンタクロースでした。
全身真っ赤な服を着て、肩に大きな袋を担いでいます。
ただ、髭がないのと、帽子がイメージと違いました。
サンタクロースはのそりのそりと歩いてきて、僕に気がつくと視線をチラッと投げかけてきました。何かプレゼントをくれるのかなと期待したいのですが、サンタクロースは口元で指を一本立てただけでした。
自分を見たことを誰にも言ったらいけないよ、という意味だと思って僕は何回かうなずきました。
すると、サンタクロースは、満足したように玄関から出て行きました。
夜になってお父さんがケーキを買って帰ってきました。僕は約束を守ってサンタクロースを見たことは黙っていました。
お父さんは、2階から戻ってくると、顔を真っ青にしてどこかに電話をかけ始めました。
それから、お巡りさんがいっぱい来て、家の中をいったりきたりし始めました。
そういえば、今日は、お母さんの帰りが遅いです・・・・。